アスリートの生い立ちや人生のターニングポイントを聞く「わたしのツクリカタ」。ジャパンサイクルリーグ(JCL)は、3月25日カンセキ真岡芳賀ロードレース、26日カンセキ宇都宮清原クリテリウムで開幕します。シリーズ開幕に合わせ、JCLの昨年度年間王者で宇都宮ブリッツェンのエース、小野寺玲(27)に話を聞きました。全4回の最終回。絶頂期に引退する夢を語りました。(取材・構成=沢田啓太郎)

-誰もやったことがないことをやりたいと発言されています。プロとして唯一無二の目標、描く未来は

小野寺 昔からそうだったらしいですが、人と同じがいやなんです。子供のころ、友達と一緒にお菓子を買いにいったら、僕が選んだものと同じお菓子を友達が選んだら、僕は違うものに変えるっていうくらいでした。その性格は今でも残ってて、やっぱり勝ち方ひとつにしても人と同じ勝ち方、人と同じガッツポーズはいやなんです。どのレースで勝ちたいという目標は僕にはなくて、僕がF1ドライバーにあこがれてF1ドライバーを調べたように、将来的に僕が選手でなくなったとき、子供たちにウィキペディアかなんかで調べてもらえるような存在になりたい。それが選手としての目標の1つです。

-そのためにはどうすればいいのでしょうか

小野寺 必然的に結果を残すということは重要です。ただ、単純に結果を残すのではなく、人の記憶に残るような勝ち方をする。表彰台でポーズをする、ゴールをしたときにポーズをする、かつ大きいレースでちゃんと勝てる選手。そういう理想像をずっと描き続けてきました。

-自分が思い描くようなプロ人生になっていますか

小野寺 この業界のなかではそれなりに名をはせることができたと思っています。海外に出て活躍している有名選手には実績で言えばかなわないですが、印象で言ったら、国内で自転車をやっている人たちの記憶には残れているのかな、という感触はあります。

-ブログやSNSで積極的に発信されているのもそれが1つの理由ですか

小野寺 そうですね。自分の好きなもの、やっていることをオープンにして、いろんな業界の人を取り込んで一緒に楽しくやりたい。僕は隠しごとせずに好きなことを好きだとアピールしたいタイプで、それで共感してくれる人が反応してくれたり、話したりしてくれる。この立場をいかしてコネクトを広げていく、そんなことは自ずとやってきたかなと思います。

-あの特徴的なポーズはいつ、どこで考えているのですか

小野寺 アニメ鑑賞が好きなので、そういった作品からインスピレーションをもらっています。勝ちに行くレースでは必ずポーズの予習復習を部屋でします。いざレースになると、勝ちにいけると思っていないレースで勝てるシーンとか出てくるので、そういうときは頭の中にあるストックの中から、ばっと出てきたやつをやっています。

-いくつくらいストックがあるのですか

小野寺 正直けっこうな数を出してきているし、自転車の上でできるポーズってかなり制約があるので、ストックは少ないです。

-ストックを増やさないと

小野寺 増やすためにも日頃からずっと新しい(アニメ)作品をみていますし、いいなあと思ったら記録するようにしてます。

-アニメ以外からインスピレーションをもらうことは

小野寺 基本的にはアニメの世界からがほとんどです。

-いずれカヌレの店は出店しないのですか

小野寺 小さな店を持つ夢はあります。それを本業にするのではなくて、引退後に別の仕事をして余裕ができたときに店を構えたらおもしろいんじゃないかな、ということは考えています。

-自転車選手の競技年齢はどれくらいまでですか

小野寺 人それぞれですね。ケガだったり、人生の転機で変わってきますが、周りをみていたら30代中盤くらいまでかなあ。30代後半、40代でやっている人はかなり絞られてくる。もう広く公言していますけど、僕は20代いっぱいでケリをつけようと思っています。いまのところ30代になってまでやるつもりはないです。

-では、あと2年

小野寺 そうなってくると思います。

-小野寺さんなら新しくやりたいことがすぐ出てくるような気がします

小野寺 ここ数年、次は何をやろうか考えながら生活しています。まだ具体的なものが見えていないので、不安ではありますけど。

-昨年JCL年間王者になれたのは増田さんの存在があったからとおっしゃっていますが、具体的に何を学んだか教えてください

小野寺 学んだというより、強い増田さんにさんざん引きずり回されて必死についていくうちに強くなれたっていうだけで。数字だったり技術だったり、そういうものは僕は無知なんで。前を走る増田さんを目標にして、この峠で前回は何秒差つけられたけど今回は何秒差まで縮められた、みたいな。それを日々繰り返して、底力を引き上げてもらえたというのが一番大きいと思います。

-今度はチーム内で増田さんの立場になるわけですよね

小野寺 そういう存在には性格上なれないと僕は思っているんですけど。とにかく増田さんに引きずり回してもらえたことですね。それが一番、今の自分に大きな影響を与えたことかなって思います。

-あと2年で辞めるという発言は衝撃でした

小野寺 今までは関係者内だけに抑えていたんですが、ボチボチ言い始めてもいいかなって。自分のなかではいまのところその気持ちは固いので。最後の契約の年によほどの出来事がない限りはそこで区切りをつけようと思ってます。

-アスリートは現役やっている時が一番充実しているという声をよく聞きます

小野寺 僕自身は(力が)落ちてって、勝てなくなって辞めるのがいやなんで。一番強い時に辞めたいんですよ。それが目標というか、小さなあこがれがあるんで。決断したときは寂しさを感じるでしょうけど、辞めたあともこの業界にかかわりたいとは思ってはいない。まあそれも多趣味な僕の性格のおかげかなって思いますけど(笑い)。ほかに好きなこと、いっぱいあるんで。最長2年。最後の最後に惜しまれながら辞めるのが理想ですね。あんなに強いのに辞めちゃうの?って。そんな感じの印象で辞められたら理想ですね。

-そこも人とは違う

小野寺 そうなってきますよね(笑い)。結局、自分が追い求めているのは人と違う何か、ということなんでしょう。(終わり)

◆小野寺玲(おのでら・れい)1995年9月3日、横浜市生まれ。小学生のころに栃木・鹿沼市に移り、作新学院高校に進学。卒業後の2014年に那須ブラーゼンに入り、16年から宇都宮ブリッツェンに移籍した。自ら「音速戦士オノデライダー」と名乗り、ブログ等で発信している。身長176センチ、体重64キロ。洋菓子カヌレ作りの腕前はプロ並み。

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