<高校ラグビー:東海大翔洋20-14大分舞鶴>◇28日◇1回戦◇花園

 4年ぶり9度目出場の東海大翔洋(静岡)が、大分舞鶴(大分)に逆転勝ちした。前半はFW戦で押し込まれ14点ビハインドで折り返したが、相手のスタミナが落ちた後半に逆襲。3トライなどで6年ぶりの初戦突破を決めた。前日27日の開会式を欠席したロック崎山準也(2年)がこの日チームを離脱。緊急事態を全員で乗り切った。30日の2回戦ではBシードの桐蔭学園(神奈川)と戦う。

 前半の劣勢がなかったかのように、翔洋フィフティーンが大分舞鶴を押し込んだ。後半8分、NO8松永修杜(3年)が素早いリスタートから相手をかわして反撃のトライ。13分にCTB橋本友輝(3年)が正面23メートルからのPGを決め6点差に詰めた。

 迎えた20分、インゴール目前のラックからプロップ森山魁斗(3年)が突破を試みる。相手に絡まれながらも反転し、ボールを地面にたたきつけた。橋本がゴールを決め、ついに逆転した。試合後、多数の報道陣に囲まれた森山は「気持ちいい」。初めて味わう全国大会の勝利に酔いしれた。

 FW8人の平均体重は約10キロ劣った。前半は接点で圧倒され2トライを決められた。175センチ、98キロとレギュラー最重量の森山は「負ける感じだった」という。ところが後半にキック攻撃で相手を走らせスタミナを奪うと形勢逆転。「松永が決めて絶対いける」と思い直すと、防御でも好タックルを連発。本多茂監督(55)が「初めての頑張りを見させてもらった」と驚くほどの動きだった。

 森山はチームでは「クール過ぎる」と評される。この日、崎山がチームを離れることが決定。CTB仁科翔一朗主将(3年)の携帯電話に届いたメールが全員の前で読み上げられた。「3年生に最後まで迷惑をかけてごめんなさい」。闘志を燃やす仲間の中で森山は「はあって感じ」と受け止めた。それでも、殊勲の場面では「気がついたらトライしていた」という。「情に厚くない」男を無心の境地に導く空気が花園にはあった。

 中1日で迎える桐蔭学園戦。森山は「疲れた」とこぼしたものの、声の出し方など修正点を挙げ連勝を期した。眠っていた素質の一端を見せた男は、Bシード相手にどんなプレーを見せてくれるだろうか。【石原正二郎】