<高校ラグビー:御所実17-12秋田工>◇3日◇準々決勝◇花園

 Aシードの秋田工が御所実(奈良)に惜敗し、準優勝した95年度大会以来の4強を逃した。陣地を取れず、相手のモール攻撃に屈した。FB成田秀平主将(3年)を中心に、昨春の全国選抜大会で4強入り。地元の期待も大きかったが、87年度大会を最後に遠ざかる全国制覇への挑戦は、来年以降に持ち越しとなった。

 小雪舞う花園に、秋田工フィフティーンが力なく突っ伏していく。黒沢光弘監督(51)が「全国制覇を口にできる」と大きな期待を寄せていた世代。試合後の控室には、選手の泣き叫ぶ声が響き渡った。黒沢監督は「優勝させてやりたかった」と、涙にぬれる教え子をじっと見つめていた。

 ボールを大きく動かす理想の形を、見失ってしまった。前半7分、モールから先制トライを挙げたが「そこで取れたことで、FWにこだわりすぎた。ボールを動かしてWTBに集める意識が薄かった」(黒沢監督)。密集戦で体力を消耗し、接触プレーで後手に回った後半は自陣にくぎ付けになった。12分、28分には相手のパワーに屈してトライを献上。FWが劣勢ではBKもそう簡単に前進できない。31分の意地のトライが、後半初めて敵陣22メートル以内を陥れた瞬間だった。

 「秋田の人に期待してもらったのに、申し訳ない気持ちでいっぱい」。成田主将の第一声だった。全国最多15度の優勝を誇る名門も、近年は思うような結果が出ていない。だが、昨春の全国選抜大会で4強入り。地元の期待も高まっていた。

 チームを束ねる成田は、伝統校ゆえの重圧とも戦っていた。昨年、突発的な40度近い高熱に3度も苦しみ、入院もした。東京の大学病院で精密検査を受けるも「異常なし」。母久美江さん(47)は「病院にかかったことなんてない子だったのに。すごいプレッシャーがあったと思う」と振り返る。成田は昨秋、腰の痛みを押してプレー。後で検査を受けると背骨が折れていた。覇権奪回に向け、必死だった。

 2年前の3回戦では東海大仰星(大阪)に敗戦。上位を独占する関西、九州勢の壁を越えなければ復活はない。黒沢監督は「攻撃力を鍛える」と出直しを誓った。諦めることなく、名門復活を目指し続ける。【今井恵太】