<全国高校総体:レスリング>◇5日◇神奈川・横須賀アリーナ

 日本レスリング界に、東京五輪の星が現れた。日本協会が選定する20年東京五輪の「ターゲット選手」に高校生ながら選ばれた藤波勇飛(18=三重・いなべ総合学園高)が、男子66キロ級で初優勝。全試合フォールかテクニカルフォールで、圧倒的な力を見せつけた。昨年の世界カデット選手権(16、17歳)で準優勝した「20年に1人の逸材」は、6年後の金メダルを目標に掲げた。

 片足タックルで先制すると、藤波が次々と技を仕掛けた。66キロ級決勝戦、花咲徳栄(埼玉)の団体優勝に貢献した中村剛士からポイントを連取して10-0。最後はフォールまで奪った。2回戦から登場し、5試合にかかった時間は計6分11秒。「いい試合ができました」。大会のMVPにも輝き、笑顔で振り返った。

 今年5月、東京五輪を目指す「ターゲット選手」に選ばれた。もともと20年の五輪は意識していた。昨年9月に東京開催が決まり「地元の大会だし、絶対に出たい」と思った。さらに、日本協会から「東京五輪の金メダル候補」としてお墨付きをもらった。「知った時は、うれしかった」。20年を目指し、藤波は言った。

 抜群の技術と勝負勘の良さ。強い精神力と速い攻めも武器だ。同じ階級の12年ロンドン五輪金メダリスト、米満達弘の168センチを上回る172センチと身長にも恵まれる。栄和人強化委員長が「自分の型に持ち込むうまさがある。まだまだ伸びしろがある」と絶賛すれば、原喜彦ジュニア強化コーチは「間違いなく東京五輪のエース。20年に1人の逸材ですよ」と、圧倒的な強さに舌を巻いた。

 昨年の世界カデット準優勝に続き、今年6月のアジアジュニア選手権(20歳以下)でも準優勝。いずれも決勝で激しくポイントを奪い合って惜敗した。父でもある、いなべ総合学園高の藤波俊一監督(49)は「攻めのレスリングを徹底しています」と話す。世界のトップレベルと互角に点を取り合って、自信もついた。

 6年後へ、すでに青写真もできている。五輪は新階級の65キロに挑戦する。「まずはリオを狙う」と2年後のリオデジャネイロ大会出場を視野に入れながら「東京では優勝したい」と言った。10月には都内でターゲット選手の合宿を行う予定。東京五輪への意識付けがテーマだが、高校生・藤波のターゲットはすでに20年に絞られている。【荻島弘一】

 ◆藤波勇飛(ふじなみ・ゆうひ)1996年(平8)5月27日、三重県四日市市生まれ。8歳の時に父俊一氏が主宰する「いなべレスリングクラブ」でレスリングを始め、小学5、6年で全国少年少女選手権に優勝。三重・西朝明中で全国中学選手権3連覇を果たして、いなべ総合学園高に入学した。国体や選抜では優勝しているが、高校総体は1、2年時とも3回戦で敗退。家族は両親と妹。

 ◆ターゲット選手

 日本レスリング協会強化委員会が5月10日に発表。東京五輪を目標に協会を挙げて強化をする「候補選手」で、各階級1~3人。男子フリー14人、同グレコ13人は大学生が中心で、高校生は藤波とフリー120キロ級の山本泰輝(静岡・飛龍高)、グレコ66キロ級で元世界女王の山本美憂の長男、山本アーセン(ハンガリー・バビロン高)の3人だけ。女子12人は大学生と高校生が中心となり、中学生で唯一、須崎優衣(JOCエリートアカデミー)が含まれる。選手は成績に応じて随時入れ替えされる。