<柔道:グランドスラム東京2012>◇2日目◇1日◇東京・代々木第1体育館◇男子73キロ級

 “リオの星”が圧倒的な強さを見せた。男子73キロ級で大野将平(20=天理大)が初優勝を果たした。1回戦からすべて一本を奪って勝ち上がると、決勝ではロンドン五輪銀メダリストの中矢力(23)と対戦。一方的に攻め立てて、大外刈りで一本勝ちを収めた。

 一本の瞬間、力強くほえた。それだけだった。決勝開始1分48秒。大野が、銀メダリストに鮮やかな大外刈りを決めた。どよめく場内の中で、笑みは1度もこぼさなかった。「中矢さんは調子が悪いように見えたので、ここで勝たないとずっと勝てないという気持ちだった。勝負はこれからだと思う」。オール一本勝ちにもかかわらず、若武者の表情は引き締まっていた。

 11月の講道館杯優勝の勢いそのままだった。天理大先輩で五輪代表の穴井隆将から「1回勝っただけじゃダメだ」と叱咤(しった)されて臨んだ今大会。中矢には5月の選抜体重別決勝で、相手の得意の寝技に持ち込まれて敗れた。古賀稔彦、吉田秀彦らを育てた柔道私塾・講道学舎で学び、世田谷学園高に進学した最後の世代は反省を生かして攻め続けた。1分20秒には倒れながらの小外刈りで技あり。立ち技で圧倒し、その姿に男子の井上監督も「『粗さ』を埋めている。今後が楽しみ」と評価した。

 昨年は世界ジュニアを制すも、右肋骨(ろっこつ)骨折で出られなかったこの大会で初優勝。だが、おごりは少しもない。「一番大事なのは研究されてから。勝てなくなる自分もいると思うし、勝負の世界はそんなに甘くない」。20歳らしからぬ言葉には、風格すら漂っていた。【今村健人】