宇野昌磨(17=中京大中京高)が3位に入り、日本男子で初めてGPシリーズ参戦初年度で表彰台を射止めた。

 宇野の記憶がまた飛んでいた。「ジャンプのことめっちゃ考えていた。スケーティング、表現なにも覚えてないですけど、これくらいがちょうど良い」。集中して演技に入り込んだ時は、滑りを思い出せない。それでも自然と躍動する体は、倒れるほど追い込んできた練習のたまもの。曲をかけての通し練習。「氷上で何回も何回もかけて。あまり疲れないようにというか」。氷の上で養ったスタミナが、ものをいった。

 最初から全開だった。4回転-2回転は高速回転で勢いにあふれた。王道の選曲といえる「トゥーランドット」を自分色に染める。ジュニア時代から踊れる選手として名高い表現力は、十分に通用した。スピン、ステップ、そして代名詞といえる、両手両足を開いて横に滑り、大きくエビ反る「クリムキンイーグル」まで。演技構成点では9点以上を稼ぐ項目もあった。

 樋口コーチは「いろいろなところが変わってきている」と急成長に目を細める。シニアデビュー年の17歳にとって、試合会場は観察の場。先輩たちのアップ、試合への準備に目を凝らし、それが意識を変える。偏食を改善するため、苦手な野菜も口にする。「僕の中での『なるべく』ですが食べてます」。本人はちょっと照れくさそうに胸を張る。

 GP参戦初年度でのファイナル表彰台は、日本人初の快挙。さらに初の「先輩」超えも達成した。マネジメント事務所が同じ高橋大輔さんが12年国別対抗戦で出したフリー、合計点を上回った。後継者になりたい自覚がある17歳は、王者の羽生を追う1番手。「ユヅ君は本当すごい選手。いつかは同じ舞台、立場で戦えるように」と志した。