内山靖崇(北日本物産)マクラクラン勉(ともに25)組が、昨年の全豪、全米の覇者J・マリー(英国)、スアレス(ブラジル)組を6-4、7-6のストレートで下し、初優勝を飾った。日本男子ペアの優勝は05年ジャパン・オープンを制した岩渕聡、鈴木貴男組以来、12年ぶり史上2組目の快挙。2人にとってはシングルス、ダブルス合わせ初のツアータイトルとなった。

 結成わずか1カ月。試合としては3大会目の日本ペアが、快挙を達成した。昨年の全豪、全米を制し、世界1位にもなった相手に、1歩も引かずに戦った。内山は「まだ実感が湧かない」、マクラクランは「エネルギー満々だった」と、超満員の観客を味方に付け、金星を挙げた。

 内山は強力なフォア、マクラクランは正確なサーブで攻め込んだ。第2セットは一進一退でタイブレークに突入。日本ペアはスタートから3-0と飛ばし、一気に6-1とリード。マッチポイントで、マリーのフォアボレーがネットにかかると、2人はともに両手を突き上げ、歓喜の雄たけびを上げた。

 今年4月、ダブルスでツアー3勝を誇るトーマス嶋田代表コーチが、現役時代に戦った知人で、マクラクランのコーチに声をかけ、日本登録を誘った。話し合いでマクラクランは「即答した。日本の代表になりたかった」と決断した。6月に登録をニュージーランドから日本に変更。今回の快挙の土台ができあがった。

 9月のデビス杯ワールドグループ入れ替え戦対ブラジルでは約1週間、ペアの内山と一緒に寝食をともにした。ジュニア時代、2人は10年全仏ジュニアで組んだことはあったが、内山は「その1週間で、より濃い関係ができた」という。

 準々決勝では今年の全米覇者を撃破するなど、世界の強豪コンビを次々と倒した。内山は「自分たちの力を出せば戦えると分かった」と自信をつかんだ。嶋田コーチも「優勝は普通。もっとうまくなる」と歴史に残る名コンビの誕生を確信していた。【吉松忠弘】

 ◆内山靖崇(うちやま・やすたか)1992年(平4)8月5日、札幌市生まれ。7歳でテニスを始め、11年にプロ転向。14年アジア大会団体銅メダル。15年全日本選手権で初優勝した。錦織と同じ盛田正明テニス基金で米国に留学経験を持つ。自己最高位はシングルス162位、ダブルス177位。183センチ、78キロ。

 ◆マクラクラン勉(べん)1992年(平4)5月10日、ニュージーランド・クイーンズランド生まれ。6歳でテニスを始め、カリフォルニア大バークレー校に進学し、14年全米大学選手権シングルス8強。卒業後にプロ転向し、今年からダブルスに重きを置き、ツアーを転戦し始めた。父クレーグさんがニュージーランド人、母夕利子(ゆりこ)さんが日本人。185センチ、78キロ。

 ◆日本男子のダブルス 70年に現行ツアー制度が始まる前には、4大大会の全米選手権(現在の全米オープン)で55年に宮城淳、加茂公成組が優勝した。また、33年ウィンブルドンでは佐藤次郎、布井良助組が準優勝に輝いている。70年以降ではトーマス嶋田の3度の優勝が最多だが、すべて外国選手とのペア。