平昌(ピョンチャン)五輪金メダル候補が結果を出した。小平奈緒(31=相沢病院)が女子500メートルを36秒53の日本新記録で制し、昨季からの同種目の連勝を21とした。前日の1000メートルで転倒した影響が心配されたが、自身が昨季出した36秒75を更新する滑りで不安を一掃した。

 すごみさえ感じさせる36秒だった。スタートラインに立った小平が、目をぐっと見開いた。「沸々とするものを、自分の集中力に変えられた」。100メートルを自己最速10秒19の驚異的なタイムで通過すると、前日転倒したカーブの出口で一気に加速した。慎重になった最終コーナーこそやや膨らんだが、昨年2月に自らが出した日本記録を0秒22更新。世界記録に0秒17と迫る好記録でアクシデントへの不安を一掃した。

 すっきりとした表情で氷から降りると「とにかくゴールまで滑りきりたかった」。力強くそう言い、満足そうにほおを緩めた。前日味わった悔しさがすべてだった。転倒したことに加え、200メートルを世界記録を上回るタイムで通過していたことも、行き場のない思いを膨らませた。軽度のむち打ちにより首は痛むが、この日の出場を決意。夜に2度目が覚めるほどの熱い思いを、両足に込めた。

 14年ソチ五輪後からの2年間のオランダ留学で「相手を殺すつもりでいけ」と、スケート大国に受け継がれるレースでの戦う姿勢を学んだ。帰国後はそこにアレンジを加え、小平流を作り上げた。「しっかりと輪郭をかいた絵に、少し水をたらすようなイメージ」。硬軟を織り交ぜた独自の感覚を磨き、逆境でもぶれない強い心を築き上げた。精神力が問われるレースでそれを証明すると、視線はすぐに先を向いた。

 次戦W杯第4戦の舞台は、カルガリーよりも高地にあり、記録が出やすい米ソルトレークシティー。500メートル、1000メートルともに世界記録は目の前に迫る。「来週ですね」と小平。狙いを定め、その時を待つ。【奥山将志】