前回準優勝でBシードの東海大仰星(大阪第2)が、高校日本代表候補のWTB河瀬諒介(3年)の3トライ5ゴールなどで57-12と熊本西を圧倒した。河瀬は元日本代表FWで摂南大監督の泰治氏の長男。“怪物2世”が1人で25点を荒稼ぎした。元日の3回戦はBシード秋田工と対戦する。

 河瀬の身体能力が、花園にどよめきを起こした。自らのトライで先制し、12-7で迎えた前半20分。自陣右端でパスが来た。「常にトライを取る意識。(イメージが)描けていました」。瞬時に加速すると、迫る相手を左手のハンドオフで一押し。自ら開けたスペースを50メートル6秒0の快足で約55メートルを駆け抜け、主導権をがっちり手繰り寄せた。

 例年は大阪府予選の決勝で使う聖地が、本年度は改修工事により本大会のみの限定使用になっている。芝生に足を踏み入れると「ノックオンした場所…」と悪夢が頭をよぎった。17年1月7日、東福岡との前回大会決勝。7点を追う後半28分に敵陣深くでボールを落とし2連覇が消えた。「その日はすごくへこんだ」と涙にくれた思い出があった。

 ロッカールームでは先輩に「来年は絶対優勝しろよ」と励まされ、家に帰ると父泰治氏から「次、頑張れよ」と短い言葉で背中を押された。ノックオンの原因は仰星のテーマである「真っすぐ走る」を実践せず、自分だけコースを変えたこと。この日は、愚直に走りきった。幼少期、日本代表時代の父の映像を見て「思いっきり行くところ」に胸が躍った。そのスタイルを継承し、25点を荒稼ぎした。

 卒業後は父が輝いた明大ではなく、ライバルの早大に進学する予定だ。両校の練習を見学し、最後は自主性を持った選手の雰囲気で選んだ。湯浅監督から「将来的には海外に出られるポテンシャルがある」と期待される男は「今年は絶対に優勝しかない」と力を込める。悔し涙はもう、こりごりだ。【松本航】