SP首位の宇野昌磨(20=トヨタ自動車)がフリー2位の197・45点を記録し、合計297・94点の2位で初優勝を逃した。ジャンプ2つの回転不足が響き、金博洋(中国)に3・01点及ばず。0・50点差でチェン(米国)に屈したグランプリ(GP)ファイナルに続く2位で苦汁をなめたが、金メダルの期待がかかる平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)へ前向きにとらえた。

 右拳を突き上げる決めポーズの直後、宇野は膝をつき、さらには「安心した気持ちになった」と氷に突っ伏した。最後のスピンからボリュームを上げた拍手を背中で感じ、顔を上げると笑って客席へ手を振った。「いろいろな失敗をして、少しずつ自信をなくしていた。達成感は感じていないけれど、これがスタートライン」。最終滑走の金博洋に逆転を許しても、その気持ちは変わらなかった。

 4回転サルコーを抜いて難易度を落とした「五輪プログラム」のお披露目。冒頭の4回転ループは回転不足の判定を受け、続く4回転フリップは転倒した。15-16年のシニア転向後、4大陸、世界選手権、GPファイナルはこれで3位以内が6度。それでも届かないタイトルを「結果は自分の実力不足」とうなずいた上で内容に目をやった。

 「フリップを失敗しても、そこから立て直す練習をしてきた。フリップはただ『じゃんけんで負けてしまった』と思ってやった」

 演技の1、2本目に組み込む難易度の高いループ、フリップの4回転は「挑戦する」ジャンプ。一方、練習では90%以上の成功率を誇る、演技後半の4回転トーループに苦戦してきたのが最近の消化不良の原因だった。昨年11月のGPフランス杯からは納得のいく演技ができず、12月の五輪代表決定後も「こういう演技を何度も続けてしまって申し訳ない気持ち」とうなだれた。だからこそ「後半のトーループを跳べたのがうれしい」と練習通りに2本成功させたことを喜んだ。

 試合後の記者会見では初披露したからし色の衣装の狙いを問われ、マイクを握って場内の笑いを誘った。

 「言っていいのか分からないですけれど…。多分、フリーは青で滑るので、このコスチュームは今回きりです」

 周囲に勧められて試したオールバックの髪形も「気に入っていません」とおどけた。肩の力は抜け、課題を語る口調も明るい。「自分に自信を持つのが一番大事。ジャンプの成功率を上げるのと、質を良くすること。表現は自分に染みついていると思います」。金メダルの期待がかかる五輪へ、後ろは向かず、前向きに進む。【松本航】