日本勢史上初の偉業を達成した大坂なおみ。どのようなテニス人生を歩んできたのか。テニス記者歴約30年の吉松忠弘が知られざる素顔や家族の絆に迫った。

16年の10月だった。大坂との話の中で、3歳まで住んでいた大阪の記憶をたぐった。その時、突然、大坂は日本語で「たこ焼き」とつぶやいた。やわらかい食感と強烈なにおいが五感を刺激し、3歳の子どもにもインパクトを残したようだ。

北海道・根室で育った母環(たまき)さんは、札幌で父フランソワさんに出会った。2人で仕事を探し、大阪に移り住んだ。そして、大坂は生まれた。大坂の大阪への記憶は「あまり覚えていない」。ただ、名字と生まれた都市の名が同じ音なのには、縁を感じたようだ。

14年7月にツアー本戦デビューを飾った米国カリフォルニアの大会で、地元の報道陣をけむに巻いた。「大阪で生まれた人は、みんな大坂という名字になるの」。目が点になる報道陣を前に、大坂はほくそ笑んだという。

大阪に住んでいた頃、姉まり(22=プロテニス選手)とともに、少しだけテニスを始めた。大阪の聖地、靱(うつぼ)テニスセンターでもプレーしたことがあるという。フランソワさんが、テレビで見たセリーナとビーナスのウィリアムズ姉妹に刺激を受けたからだ。「自分たちもできると思った」とフランソワさん。というのもウィリアムズ姉妹は、テニス経験のなかった父リチャーズさんの指導で、公営コートから世界の頂点に立ったからだった。

そして3歳の頃、父フランソワさん方の祖父母が住んでいたニューヨークに移住した。そこで、本格的にテニスの練習が始まった。全米の会場であるナショナルテニスセンターのそばで過ごし、公営コートでテニス経験のないフランソワさんのレッスンが始まった。そして、06年、大坂が9歳の時に、テニスにもっと集中するため、フロリダに移り住んだ。

国際テニス連盟が主催する世界ジュニアツアーには1試合も出なかった。その代わり、米国内の一般大会に出場した。それも、フランソワさんに言わせると「ウィリアムズ姉妹がそうしていた」。そして、ついにフランソワさん、そして家族で夢見ていた4大大会優勝が実現し、大坂は和製ウィリアムズになった。

<大坂(おおさか)なおみアラカルト>

◆生年月日 1997年10月16日

◆年齢 20歳

◆生まれ 大阪市

◆サイズ 180センチ、64キロ

◆家族 両親、姉

◆競技開始 3歳

◆ツアーデビュー 2013年

◆利き手 右手、両手バックハンド

◆世界最高ランク 17位(18年7月)

◆ツアー優勝 2勝

◆最速サーブ 201・1キロ

◆生涯獲得賞金 約7億7360万円(今回4億1800万円)

◆国籍 日本と米国の2つの国籍を持つ。「心は日本人に近い。落ち着いている」と、登録は日本

◆日本語 聞き取りはある程度理解するが、話すのは苦手。日本のアニメ、漫画が大好きで、日本語を学ぶ材料にもなっている

◆好きな食べ物 ウナギ、すし、焼き肉

◆好きな街 原宿