偉大な先輩を超える。先月27日に閉幕した柔道の世界選手権(アゼルバイジャン・バクー)女子70キロ級で、2連覇を果たした新井千鶴(24=三井住友海上)が2日夜、同じ所属で世界選手権同階級2連覇の上野雅恵コーチ(39)を超えることを誓った。

都内で行われた三井住友海上女子柔道部創部30周年記念パーティーに出席。式典後、取材に応じた新井は「(今大会は)所属の雅恵先生の2連覇が大きなモチベーションになった。次は雅恵先生が達成出来なかった3連覇を達成することでほんの少し抜くことができる。これで終わりでないので、3連覇を目指して勝ちきるための日々を過ごしたい」と決意を新たにした。

世界女王の重圧に苦しんだ1年だった。昨年の初優勝以降、4大会連続で優勝を逃した。代表2番手で選出され、今大会はその雪辱を果たした。勝ちきれないことをマイナスに捉えるのではなく、「足りないこと」を追求した。172センチの長身から放つ強烈な内股は警戒され、組んでもらえないことを想定し、変則技に取り組んだ。引き手を下げられた不利な体勢から体落としなどを反復した。しかし、技術以上に「メンタルが成長した」という。「これまでは『ここで負けたら…』と結果ばかり先行して自分の柔道を出し切れない悔しさがあった。今回は1戦1戦、力を出し切るために自分に(気持ちで)勝ってから相手と向き合った」。

メンタルの強さは、ハプニング時にも表れた。前大会準優勝のペレス(プエルトリコ)との準決勝では両目のコンタクトが外れ、裸眼0・1の視界が悪い状況でがむしゃらに前に出て勝利をつかんだ。世界ランク2位のガイー(フランス)との決勝でも片目のコンタクトが1度外れたが、入れ直す際に心を落ち着かせて最後は得意の内股で決めた。2度のコンタクト問題があった中、勝ちきった。

2連覇を達成しても自身を「未完成」と表現する。19年世界選手権3連覇、20年東京オリンピック(五輪)金メダルを見据えて、24歳の世界女王は「完成系」を追い求める。