男子組手67キロ級で世界ランキング7位の篠原浩人(29=マルホウ)が、決勝進出を果たした。

痛みに耐えて逃げ切った。世界ランキング4位のハンガリー選手との準決勝。上段突きで1点を先制したが、残り1分ほどで左脇腹に回し蹴りを受けもん絶。30秒を残し相手が頭部を負傷すると時計が止まり、1分ほど畳の上で待たされた時も「早く終わらないかな」と顔をしかめていた。

何とか虎の子の1点を守りきり、左脇腹を抑え「めちゃくちゃ痛いっす。半端ない」と苦笑いを浮かべた。

9歳下のスーパースターに刺激を受けた。9月中旬、ドイツで行われるプレミアリーグへ向け、出国する直前のこと。全米オープンを制した大坂なおみ(20=日清食品)の号外を都内で手に取り、衝撃を受けた。「同じ大阪出身で名前もオオサカ。頑張っているなって」。ドイツで泊まったホテルの壁に号外を張りつけ、毎日確認した。同じ大阪出身のスーパースターから力をもらい、大会の結果は3位。2回戦敗退に終わったアジア大会から、調子は上向きつつあった。

練習法もシンプルに変えた。初動負荷トレーニングなど、普段の稽古以外に取り入れていた練習を、2カ月前にやめた。転機はアジア大会からの帰国後。母校の浪速高に戻り、高校生と混じって練習する中で「自分の空手スタイルを見直せた」。かつての多彩な練習方法も自己満足に感じた。稽古場でひたすら空手の技術のみを見直す日々。「技の入りが大きくなってそこを狙われてカウンターを狙われていた」。反撃の隙をつくらないために、体全体の動きを小さくまとめてきた。

決勝は世界ランキング1位の相手で、前回は判定で負けた。「自分は技術がたくさんあるわけじゃない。相手が崩れたところをしっかり狙いたい」と、リベンジを誓った。