16日にアメリカンフットボール大学日本一を懸けて早大と対決する関学大アメフト部に密着してきた「関学スポーツ」が悪質タックル問題を振り返った。

5月の日大との定期戦を実際に現場で取材した「関学スポーツ」の編集長・松尾誠悟さん(3年)は「一触即発の異様な雰囲気だった」と当時の様子を振り返る。

日大選手の悪質なタックルで、関学大QB奥野耕世(2年)が負傷して社会問題となり多数のメディアに取り上げられた。「関学選手の活躍を伝えることが僕たちの使命。社会問題を取り上げるのかどうか葛藤がありました」と松尾さん。「でもあの現場にいたからこそ伝えないといけない。アメフトに悪い印象を持たれてしまう」と覚悟を決めて悪質タックル問題を取り上げた。

松尾さんは学生記者ならではの密着取材で、騒動後の6月、鳥内秀晃監督や被害を受けた奥野に単独取材し、アメフトの楽しさを伝えるために記事を書き続けた。取材中、鳥内監督の「部活を本心から楽しいと思ってもらわないといけない。いかに苦しい練習でも楽しいと思えるか」との言葉に感銘を受け、後輩たちにも伝えているという。

選手たちの動揺と成長も見続けてきた。「選手自身もここまでの問題になるのかと驚いていた」。連日の報道に加え、関学大には多数のメディアも押し寄せた。「騒動がきっかけとなって『やるべきことをやるだけ』『ルールの範囲でアメフトをやる』という言葉が選手から出るようになった。ある意味いい勉強になった」と問題を乗り越えた選手たちを見つめてきた。

「被害者と言われてしまうが、僕たちは奥野の活躍、人柄、物語を伝えたい」と松尾さん。シーズンがクライマックスを迎えた今、今度は学生記者だからこそ、純粋にスポーツとしての側面を記事にしたいという。「僕たちの使命は体育会の素晴らしさを伝えること」。甲子園ボウルは16日、午後1時5分にキックオフだ。【鶴屋健太】