ショートプログラム(SP)1位の宇野昌磨(21=トヨタ自動車)が、フリー1位の187・04点を記録し、合計289・10点で3連覇を果たした。SPが行われた22日の公式練習前に、右足首を捻挫。一時は歩けないほどの状態だったが、周囲の反対を押し切って強行出場。信念を貫いた気迫の演技を見せ、世界選手権代表入りを決めた。

一時は歩けない程の痛みだった。そんな状態の右足首で、宇野は冒頭の4回転フリップを跳んだ。力強く着氷。多少の乱れはありながらも、残る2つの4回転ジャンプも決めると、最後は両手でガッツポーズを作って喜びを表現した。演技前の6分間練習では3回転の連続ジャンプ着氷時に、動きが止まっていた。残りの2分間は1度も跳ばずに終えていた。心も体も不安はあったはず。それでもやり切った。

信念を貫いた強行出場だった。22日午前の公式練習前の陸上でのウオーミングアップ中に右足首を捻挫した。その時は痛みを感じなかったが、1度ホテルに戻ると痛みが増した。周囲の反対を押し切り、痛みを抱えながら臨んだSPで首位に立った。「オリンピック(五輪)以上にうれしいSPでした」と表現した。

だが、SPを終えた夜には、歩けないほどの痛みが出た。23日は公式練習を休んで病院に行き、磁気共鳴画像装置(MRI)などで精密検査。「選手生命には響かない」と医師から言われ、この日のフリー出場を決意。樋口コーチからは出場を反対されたが「僕の、宇野昌磨という生き方はそうなんです」と言ってリンクへ。この日の公式練習でも、演技前の6分間練習も満足に滑ることはできなかった。痛み止めを飲んで、ほぼ、ぶっつけ本番で優勝した。

右足首に負担がかからないよう、スケート靴から黒いスニーカーに履き替えて表彰台に上がった。3連覇を果たした王者は「ケガしてしまったことは自分の不注意。でもケガがあったからこそ自分を信じることができた。ある意味ケガに感謝している。良い経験が出来た」と言い切った。今回の苦難をもプラスにとらえた。一方で「自分のわがままでたくさんの人に迷惑をかけた」とも言った。

次は世界の頂点に挑む。グランプリファイナル、昨年の世界選手権や平昌(ピョンチャン)五輪など、主要国際大会でことごとく2位が続いている。世界選手権代表入りの会見では「1位になるために、自分を信じていい演技をしたい」と話した。世界の舞台でも、この日のように信念を貫き続ける。【佐々木隆史】