今季の国際大会6戦全勝で、世界選手権初出場優勝を目指す紀平梨花(16=関大KFSC)がSP7位と出遅れた。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)を失敗し、1回転半とみなされ0点に。今季国際大会では最低の7位発進。グランプリ(GP)ファイナル、4大陸選手権との3冠が遠のいた。

大観衆が固唾(かたず)をのんで見守る中、勢いよく助走をつけて挑んだトリプルアクセル。跳んだ瞬間に回転がほどけると、一斉にため息がもれた。他はまとめたが、点数は伸びず。「もう、また」と言ったかのように、演技終了後に口元が動いた。

「実はあまり試合が楽しめない人」。紀平は自らをそう分析する。幼少期からいつも「あぁ、試合だ。嫌だな…」と演技前は心が曇った。今季は国際大会6戦全勝。GPシリーズデビュー戦優勝を飾った昨年11月のNHK杯では、SP5位からの大逆転で注目を一身に浴び、12月のGPファイナルでは平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)女王のザギトワを上回って頂点に立った。カナダからの帰国時にはカメラ約20台が空港で待つ大フィーバー。注目は逆にモチベーションとなり「注目されて悪くなるというよりも、良くなっているのかなって思う」。演技前の「楽しさ」がない分「終わった時はうれしい気持ちになる。崖っぷちの状態の方が、緊張しなければ、いい演技ができる」と増幅した達成感を力にしてきた。

今季の国際大会では4度逆転優勝。ただ、世界選手権での逆転優勝は容易ではない。首位ザギトワから11・18点の大差にも「自分が悪かった所を全部克服すればできる」と言い切った。そして「世界選手権ではトリプルアクセルを2本、絶対に入れたいと考えていた。必ずトリプルアクセルを2本決められるようにして自己ベストを更新したい」。フリーでの逆転を信じる。【佐々木隆史】