「新元号になっても、もちろん飛びます」-。ノルディックスキー・ジャンプ男子のレジェンド葛西紀明(46=土屋ホーム)が26日、今季のW杯全日程を終え、羽田空港に帰国した。89年に世界デビューしてから30年。平成の空を飛び続けたレジェンド。新たな時代の幕開けを前に、「平成は悔しさとか、悲しさとかたくさん経験した。すごい道だったと思う。年号が替わっても素晴らしい道を歩んでいきたい。どんな試練が待っているのか楽しみ」。今季を終えたばかりで疲れた表情を見せながらも、その視線は早くも先を向いていた。

「無」になって自分を取り戻した。18年平昌五輪前から助走路のスピードがでないことを課題に挙げ修正してきたが、今季中盤からは、スピードよりも飛距離を求めるジャンプに替えた。その成果もあってか、W杯個人総合で37位に甘んじたとはいえ、徐々に調子を上げ、得意のフライングヒルで行われた最終戦で19位。確かな手ごたえをつかんだ。

葛西は「最近は周りよりスピードがでないので、ノルウェー選手のようなジャンプを求めていたが、スピードが戻ってきても飛距離がでなかった。飛べないとやっぱり面白くない。だからもう何も考えないで自然と体が動くままに飛んだら良くなってきた」と話した。

今季で8年間、チームのコーチを務めたヤンネ・バータイネン(フィンランド)が退部する。現在、チームは後任にオーストリアの元選手と交渉中だ。「強い国はほとんどオーストリア人が指導している。オーストリアスタイルも取り入れながら、また新たに良いものを生み出せれば」と話す。

21日に引退したイチロー外野手(45)とは同年代。その存在に何度も勇気をもらってきた。「40-50代がどんどん辞めて寂しいです。イチローさんが頑張っているから僕も頑張ろうと思っていた」と振り返った。

帰国したジャンプ代表の会見に出席したのは、日本人初となるW杯個人総合王者になった後輩の小林陵侑だけだった。後輩の活躍に「監督としてはうれしいが、選手としてはやっぱり悔しい。コノヤローと思うよね。でも、こういう気持ちがなければ世界と戦えない。また、世界のトップにいきたい」。レジェンドは、いつまでも、どこまでも、飛んでみせる。