2020年東京オリンピック(五輪)のチケット争奪戦が始まった。9日午前10時に申し込みをスタートさせた公式販売サイトにはアクセスが殺到。ログインできない状態になり、多い時には順番待ちに数十万人が並んだ。

申し込み開始直前の1日で、大会ID登録者が295万人から355万人に激増。予想を上回る人気に、大会組織委員会はシステムの修正や先着順でないことの周知徹底など対応に追われた。

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午前10時、日本列島に東京五輪「チケット狂騒曲」が響き渡った。受け付け開始と同時にサイトへのアクセスが集中。すぐにつながりにくくなり、待ち人数や時間を表示する「ウェイティングルーム(待合室)」には長蛇の列ができた。混雑は昼すぎになっても激しくなる一方。会社で、学校で、家庭でも「つながらない」の声が噴出した。

正午12時、東京・六本木で行われた「申し込み開始イベント」も異様だった。ゲストのタレント渡辺直美とBMXフリースタイルの中村輪夢が申し込みを呼びかけるはずだったが、司会者は「申し込み順は当選に影響しないので、期間内の都合のいい時にお申し込みください」と繰り返した。

イベント後には、組織委チケッティング部の鈴木秀紀部長が緊急対応。「アクセスが多く、システムに負荷がかかった」と話した。結局、午後5時までのアクセス数は延べ130万。最多の待ち人数は約18万人だった。当初は累積人数だったため、70万人超という数字まで表示された。「想定していた」とはいえ、システム容量の一部増加と土日もコールセンターを開くことが緊急に決まった。

8日午前0時時点のID登録者は295万人。申し込み開始前の1日で24万人増えて9日午前0時には319万人になった。過去五輪で最もチケットが売れた12年ロンドン大会時は、直前で200万人。登録者が1・5倍以上だから申し込みが殺到するのも当然だった。さらに9日午後5時には355万人まで達した。

先着順でないことを徹底することで、10日以降はある程度落ち着くはず。それでも、28日の締め切り間際には再びアクセス殺到が予想される。この日の問題はアクセス殺到だけで「システム上の障害はない」と鈴木部長は説明したが、仮に不具合が起きればパニックになることは間違いない。長いようで短い20日の申込期間。「狂騒曲」は始まったばかりだ。【荻島弘一】