20年東京五輪に向けて、12歳の金メダル候補が誕生した。パーク女子の岡本碧優(みすぐ、Proshop Bells)は初出場の大舞台で圧巻の滑りをみせ、63・16点で初優勝。

パーク初の五輪予選対象試合で女子選手として公式戦で初の540(1回転半)系に成功し、世界の度肝を抜いた。3位には10歳の開心那(ひらき・ここな)が入り、ストリート男子は白井空良(17)が2位と健闘。若き日の丸スケーターが本場のファンを驚かせた。

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スケートボードを知り尽くした観客が誰よりも高い岡本のエアに沸き、豪快なトリックに酔った。圧巻は女子では大舞台で誰も決めたことがない回転軸を斜めにした540の連発。「不安もあったが、決まってよかった」。2位を大きく引き離す圧勝に「優勝できると思っていなかった。びっくりです」と言った。

昨年11月の世界選手権で5位入賞したが、注目されたのは優勝した四十住や2位の中村だった。それが、この半年で得意のエアの高さは増し、男子並みに高難度なトリックも次々と習得した。足先まで気を配った絵になる空中姿勢。決勝進出8選手中、最も小さい141センチの体が、カリフォルニアの青い空に一層映えた。

「笹岡家のサポートがあって、できている。ありがたいです」と優勝インタビューで言った。昨年12月に「競技に専念したい」と今大会パーク男子最高の10位に入った笹岡建介(20)の岐阜市の実家に下宿し、笹岡の兄拳道さん(26)のスクールに通った。「難しい技やランの構成なども教えてくれる」と感謝した。

準決勝は2位を15点も離してトップ通過、決勝も1本目の58・16点で優勝を決めながら最終3本目の「ウイニングラン」で唯一の60点台を出し、2位に10点近い差をつけた。17歳四十住や19歳中村ら“ベテラン”がミスする中、完璧に45秒3本を滑りきった。

今春中学に入学したばかり。5月の日本選手権で関に次ぐ2位に入り「東京でもパリでも、五輪には出たい」と話していたが、東京五輪出場どころか一気に金メダル最有力候補に躍り出た。それでも「(コース上部の縁を使った)グラインド系の技やスピードがまだまだ」と貪欲。パーク女子新時代のエースとなった岡本は、東京五輪までまだまだ進化を続ける。【荻島弘一】

 

◆岡本碧優(おかもと・みすぐ)2006年(平18)6月22日、愛知県高浜市生まれ。小2の時に兄の影響でスケートボードを始め、昨年5月の日本選手権3位で強化指定選手入りすると、11月の世界選手権で5位。今年3月の日本オープンで優勝し、5月の日本選手権では2位に入った。141センチ、36キロ。

 

◆東京五輪への道 出場枠は両種目男女各20人で、1カ国最大3人。来年の世界選手権(未定)上位3人以外は、ワールドスケートによる五輪ランキング上位17人が決まる。同ランキングは来年5月31日までの予選対象大会で決まる。ポイントは世界選手権、SLSなどプロツアー、国際オープンなど5スター大会の順で大きい。日本のパーク女子はメダル独占もあるほどレベルが高い。

ストリート女子は世界女王の西村を筆頭に織田、伊佐、中山、藤沢、同男子も堀米に白井、青木、池田らが続く。パーク男子は笹岡が有力、平野ら2番手は微妙か。五輪出場に年齢制限はない。