海ならではの珍現象だ。2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会による追加種目サーフィンのテストイベントが18日、本番会場となる千葉・一宮町の釣ケ崎海岸で行われた。観覧エリアとなった浜辺にウミガメが産卵しており、四方を柵で囲い、警備員も配置して保護。組織委の森泰夫運営局次長は驚きを隠せなかったが、大会期間中にも起こり得る事態に、自然との共存は欠かせないとした。

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採点競技らしく立派にそびえたつジャッジタワー。そのすぐ下の浜辺に、高さ約60センチのコーン標識と高さ約1メートルの柵で囲まれた一角があった。警備員2人が配置され、立て札に「ウミガメの産卵場所です。子亀が海へ旅立つまで約60日、やさしく静かに見守って下さい」と記されていた。

今月10日に「一宮ウミガメを見守る会」が、海岸を巡回中に産卵場所を発見した。同会は一宮川の河口から、南方にある太東海岸の途中までの約7キロの海岸沿いを巡回している。その範囲内の釣ケ崎海岸で、しかも東京五輪の本番会場で、しかも取材と観覧エリアとなる約500メートル幅の浜辺に、今年初めてとなる産卵があった。

同会の担当者によると、約7キロのエリアで過去10年の間に137カ所の産卵場所を発見したという。まさに産卵スポットで、5~8月にかけてがウミガメの産卵シーズン。これからさらに産卵場所は増える見込みだ。

今回はジャッジタワーの下で、選手通路から約5メートルの場所に産卵があったが、今後どこに産卵するかは当然不明。この日は運営に支障はきたさなかったが、場所によっては運営や競技において配慮が必要になる。

競技が実施される来年の7月26日から8月2日は、産卵シーズンとかぶる。森運営局次長は「サーフィンはウミガメが産卵する場所等々でよく競技をすると聞いている」と理解。その上で「そういうものと共生しながら、うまくお付き合いしていくのは非常に重要だととらえている」と話し、具体的な対策は今後協議するとした。【佐々木隆史】

◆ウミガメ 世界に8種類存在し、そのうち日本には6種類がすんでいる。アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイの3種類がよく見られ、今回の産卵はアカウミガメによるもの。種類によって食べる物も違い、アカウミガメはヤドカリなどの硬い物を好み、アオウミガメは海草やクラゲを好む。体長も約60センチ~170センチと種類によって異なる。生涯のほとんどを海中で過ごし、メスの産卵時以外では基本的に陸に上がらない。1度に約100個の卵を産み、2週間おきに2~4回ほど産む。産卵は2~4年の間隔で行われる。