【光州=益田一弘】世界記録保持者渡辺一平(22=トヨタ自動車)は2分6秒73で銅メダルを獲得した。予選を全体9位、準決勝を同6位で通過。決勝で世界新記録の2分6秒12を出したチュプコフ(ロシア)、準決勝で2分6秒67を出し渡辺の記録に並んだウィルソン(オーストラリア)に先着されたが、17年大会銅メダルに続く表彰台は確保。17年1月からの世界記録保持者の座からは陥落したが、東京オリンピック(五輪)までの1年でこの差を埋める覚悟だ。

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残り25メートルで3人が並んだ。渡辺はテンポを上げた。プラン通りの泳ぎもチュプコフのスパートに敗れて、ウィルソンにも先着された。世界新決着の決勝で3位。それでも「今日できることは精いっぱいやった。すがすがしい銅メダル」と迷いなく言った。

150メートルまで1分33秒58のハイペースで飛ばした。「そのレースパターンが一番いいタイムが出る」。特長は出し切ったが、世界記録を0秒55も更新された。「2分6秒1台は今の僕に出せる記録じゃない。世界記録もかっさらわれた。これだけ強いライバルがいる。燃える、負けたくない、理由になる」。

いつだって悔しさが原動力だ。3月26日、同学年の渡部香生子と卒業式に出席した。早大入学当初から「ダブルワタナベ」と注目されたが、12年ロンドン五輪出場の渡部に比べて、渡辺の実績といえば13年ユース五輪金。「僕は(フル)代表にも入っていない。自分は劣っているのに」と同列に扱われることに気後れを感じた。練習では渡部の大きな泳ぎ、水をキャッチする感覚を間近で見て、嫉妬した。「自分が同じものをもっていたら」。渡部の練習設定タイムが自己記録+5秒なら「僕は+4秒で泳いでやろう」。絶対に負けたくなかった。

今大会は世界記録が必要と覚悟して入った。「攻めに攻めまくろう」。準決勝のウィルソンの世界タイ記録で腹もくくった。金メダルは逃したが、2大会連続銅メダルで逆襲につながる足場は確保。「自分は強くなっているはずなのに2年前と同じ3位。すごく、すごく悔しい」。北島氏をリスペクトしており「東京で日本のお家芸である平泳ぎが負けるわけにはいかない」を決意を口にした。

奥野コーチは、東京五輪での優勝タイムについて「2分5秒5台。ハイペースを持続する能力はチュプコフを上回っている」と分析。「1年間、地獄のような練習をして、天国のような表彰台に上がりたい。一番上に登りたい」と渡辺。負けを潔く認めた上で「前世界記録保持者」としてライバルを追いかけていく。