20年東京パラリンピックまで1年を切り、パラリンピックのシングルスで2度の金メダルを誇る世界2位の国枝慎吾(35=ユニクロ)が悩んでいる。「迷ってます。悩むところがある」。今大会も、同5位のヒューイット(英国)に、降雨のために2日がかりとなった初戦で、3-6、6-7のストレート負け。これで、今年の4大大会でシングルス無冠。18年全仏優勝を最後に、4大大会のシングルス優勝から遠ざかっている。

東京パラリンピックで金メダルを奪回するため、世界の車いすテニス界で台頭する若手に対抗するために、約3カ月前から、バックハンドを改造し始めた。「これが実る日が来ると信じてやっている」。

16年に右ひじを手術した後、右ひじに負荷がかからないバックハンドの打ち方に、1度、改造している。それまで、直線的な弾道を持ち味とした打ち方だったのを、縦回転のスピンが効いたバックに改造した。グリップの握り方、フォームも変えた。

それを今、現在のバックを残しつつ、再び、以前の直線的な弾道の球が打てるバックを取り入れ、融合を計ろうというのが、今回の改造だ。そのため、またグリップもフォームも変えた。改造当初は「日替わり」で調子が変わった。今は「週替わりなので、少しはまし」。

それでも「2週間前までは良かったが、その後、おかしくなった」ことで、当たりの感触がつかめない。この日もそうだった。迷うと、威力のない棒球が相手に行ってしまう。そこに集中すると、今度は、フォアハンドがおかしくなった。

改造を決意した理由には、現在世界1位で、今年の4大大会全てを制しているグスタボ・フェルナンデス(25=アルゼンチン)の存在がある。上半身を鍛えに鍛え、そのパワフルなショットで台頭してきた。その彼に勝つことを考えた時、どうしても改造が必要だった。「グスタボを意識しての改造」と公言する。

東京パラリンピックまで1年弱。「とりあえず、せっかく始めたので年末まではこれで行く。それでもうまくいかなければ元に戻すかも」。試行錯誤は、再び世界王者に返り咲くための我慢の時だ。

 

◆全米オープンテニスは、WOWOWで8月26日~9月9日、連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。