男子500メートルで、帯広市出身の村上右磨(27=高堂建設)がW杯初優勝を飾った。34秒58のリンク新をたたき出し、2位新浜立也(23=高崎健康福祉大職)に0秒09差をつけた。前日12日に27歳の誕生日を迎えた遅咲きのスケーターは「ずっと取れない1位をやっと取れた」と笑みを浮かべた。

「自分自身に誕生日プレゼント」。そう決めて臨んだ日本でのレース。最初の100メートルを全体1位の9秒51で通過すると波に乗り、コーナーワークも力まず回った。世界記録保持者のバベル・クリズニコフ(ロシア)や成長著しい新浜らを抑え、表彰台の真ん中に立った。「2人が本調子じゃない状況かもしれない。それでも、現状では自分はこの滑りがベスト」と納得顔で振り返った。

苦労人がトップに立った。昨季までの所属先は「村上電気」。14年に大学を中退後は、家業を手伝いながら競技を続けてきた。父忠則さんの指導もあり、16年からナショナルチーム入り。昨季は安定したタイムを出せるようになり、W杯の表彰台には6度上がった。今季はレース後半にもパワーを出せるよう、中長距離のメニューにも重点的に取り組み、必死に自転車をこいできた。

8月に地元、帯広市の建設会社に入社した。「会社ではパブリックビューイングがあって、今日は社長が(現地に)応援に来てました」。今までにはない、バックアップも力となった。このままW杯で活躍し続ければ、22年北京五輪も見えてくる。「それまでにどんどん成長したい」。目指すは29歳、アラサーでの初五輪。実力でも経験でも日本の男子短距離をけん引していく。【西塚祐司】