昨年ラグビーワールドカップ(W杯)で日本代表の躍進を支えたWTB福岡堅樹選手(27=パナソニック)が、今度は東京オリンピック(五輪)7人制ラグビーで日本を熱くする。福岡・古賀市で医師の家系に育ち、五輪後は医学の道に進むことを決めている福岡選手は、ラグビー人生の集大成として完全燃焼を誓う。

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19年10月20日、東京・味の素スタジアムは観衆4万8831人の感情が入り交じっていた。ラグビーW杯日本大会準々決勝で日本は、のちに優勝する南アフリカに3-26で敗れた。ねぎらいの拍手、笑顔、涙-。客席の一角にある記者席にいたが、私は無の心境で、試合終了後の福岡堅樹だけを見ていた。

双眼鏡の先にいる福岡は26秒間、誰とも話さずに立っていた。その後に最初に歩み寄ったSO松田と握手し、同学年のWTB松島と抱き合った。15人制日本代表引退を公言して臨んだ大会。それでも「心変わりするのでは?」と想像した。

午後10時を回り、取材エリアに現れた福岡は言った。「人生の中の最高の大会でした。ここまで頑張れたのは、ここが最後だから。後悔はありません」。祖父の言葉の他に、もう1つの座右の銘があるという。スティーブ・ジョブズの「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」。ハングリーに未来を渇望する尊さを、あの夜に再確認した。【ラグビー担当=松本航】