日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(62)が28日、札幌市が招致を目指す2030年冬季オリンピック(五輪)の開催地について「早ければ来年にも決まるかもしれない」との見通しを明かした。

都内で行われた共同通信社きさらぎ会で講演し、国際オリンピック委員会(IOC)委員に就任したことや本部があるスイス・ローザンヌを訪れたことを報告。その中で札幌のほか、ソルトレークシティー(米国)とピレネー・バルセロナ(スペイン)も関心を示している30年の冬季五輪開催地が、9年前となる来年にも決定する可能性が高まっている、との認識を示した。

これまでの五輪開催地は原則7年前に決まっていたが、IOCは相次ぐ立候補都市の撤退を受けて昨年、選定手続きを変更。7年前とする五輪憲章の規定を削除し、時期にとらわれずに決定できる規定とした。これにより、30年大会が従来の23年より前に決まる可能性が出ていた。

山下会長は「ご存じの通り、7年前の縛りがなくなった。(IOC関係の)いろいろな方から、早く準備しろと(言われた)」と選定が早まっている印象を受けたと説明。今月10日の総会でIOC委員就任が承認された後、スイスからの帰国日を14日から24日に延長して18日間、滞在し「いろいろな方と意見交換ができた。会って話したり、食事したり、ミーティングしたり。そのために残ったようなもので実りある滞在だった」。交流を通して、札幌への期待の高さを肌で感じたようだ。

JOCは29日の理事会で札幌を国内候補都市に正式決定する方針。11日には札幌市の秋元克広市長がIOC本部でバッハ会長と会談し、30年大会の招致に向けた協力を依頼している。山下会長は「まだ何も決まっていないが、チャンスはあるぞ、とは思いました」。あくまで主観として、札幌に追い風が吹きそうな印象も受けたが「油断はできない。これからが大事。やるべきことをしっかりやらなければいけない」と引き締めた。

札幌では今夏、移転が決まった東京五輪のマラソンと競歩が開催される。その成功が第1歩となるのは間違いない。30年大会に、正式に手を挙げることになった場合の招致活動も含め「ピシッとやるべきことをやっていけば、こちら側に流れがくると思う」。IOCでは発展途上国へのスポーツ普及や振興、異文化理解の推進、青少年の健全育成を図るソリダリティー部門の委員会に入ることを希望したという「世界の山下」新委員。任期は8年。夢への挑戦は続く。【木下淳】