【ソウル】ショートプログラム(SP)首位の紀平梨花(17=関大KFSC)が男女通じて大会初の2連覇を果たした。

フリーも1位の151・16点を記録し、今季自己最高の合計232・34点。1本目のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は1回転半となったが、演技後半に抜群の修正力を発揮した。SP3位劉永(ユ・ヨン、15=韓国)が2位。樋口新葉(明大)は4位、坂本花織(シスメックス)は5位となった。

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会場中の興奮が伝わっていた。最終滑走を控え、立ったリンクサイド。紀平はその場でジャンプを繰り返し、体を温めながら劉永の演技を見つめた。慣れ親しんだ音楽。同じ浜田美栄コーチに教わる後輩が、次々とジャンプを決めていった。好演技に観衆は総立ち。リンクには、一斉にプレゼントが投げ込まれていた。

「ヨンちゃんの点数にすごく驚き、少し緊張した」

氷に立ち、滑りを確認しながら、劉永の得点を聞いた。重圧を振り払おうと「この空間を楽しんで、集中しよう」と腹をくくった。冒頭は3回転サルコーとし、滑らかに着氷。朝、起きた時点で「疲労がすごかった」と4回転回避を決めていた。だが、続くトリプルアクセルが落とし穴だった。基礎点8・00点の3回転半に挑んだが、空中でほどけ、1回転半で1・10点にとどまった。真骨頂を見せたのは、そこからだった。

フリーのルールで、3回転ジャンプは2種類のみを繰り返すことができる。その1種類だったトリプルアクセルが1回転半となり「どうしよう…」。中盤にステップを踏みながら、瞬時に対応できる構成を考えた。基礎点1・1倍で稼ぎどころの最終盤。自信を持つフリップとトーループの組み合わせで、予定から基礎点を2・09点上げた。演技後、出迎えた浜田コーチに「合っていましたか?」と尋ねた。同コーチは「劉永でかなり盛り上がっていたけれど、すごく落ち着いていた」。傷口を最小限にとどめた修正力をたたえた。

紀平 すごく焦ったけれど、リカバリーがうまくいった。優勝は狙っていたものだった。狙って優勝することができて、収穫がすごくあった大会になった。

シーズンはいよいよ最終盤。チャレンジ・カップ(20日開幕、オランダ・ハーグ)を経て、3月には今季最大の舞台、世界選手権(カナダ・モントリオール)が待ち受ける。実戦の経験値を積み、17歳は笑った。

「4回転、スピン、ステップ…。たくさんやることがある。練習が休みっていうことはないと思います」

強くて、賢い女王は、歩みを止めない。【松本航】