アメリカの新型コロナウイルス感染者数が、26日に中国を抜いて世界最多となった。

19日に自宅待機命令が出たロサンゼルス(LA)では、生活必需品の買い出しなどとともに、他人と6フィート(約1・8メートル)離れた上で屋外での散歩やジョギングは認められている。健康維持のため運動する人が多いLAでは、最初の週末にスポーツジムが閉鎖された影響もあり、ハイキングコースやビーチに人が殺到。カリフォルニア州のニューサム知事は即座にビーチや州立公園を閉鎖した。医療崩壊を避けるために待ったなしの対応が求められる中、LAでは不要不急ではないビジネスの営業を続ける店舗に対して電気や水道を強制遮断する手段にまで出ている。

知事や市長は連日の会見で「命を守るための行動」を繰り返し呼びかけ、ついにはドナルド・トランプ大統領から全国民に「感染予防ガイドライン」と題した手紙まで送られてきた。こうした政府の対応が功を奏したのか日に日に外出する人の数は減り、夜8時を過ぎると街はひっそり静まり返る。多くの人が数週間前まで対岸の火事だと思っていたが、今では「ステイ・セーフ(無事でいてね)」があいさつ代わりの合言葉となり、私の住むアパートでも管理会社から「感染や感染者と濃厚接触が発覚した場合はすぐに報告すること」という通達が届くほど危機が身近に迫っていると感じる。

各国首脳が「戦争」と捉えるこの状況は、日常生活や経済活動だけでなく、娯楽にも影響を及ぼしている。映画館が閉鎖されて新作映画の公開がなくなり、本来なら大リーグが開幕し、プレーオフ争いが佳境を迎えているはずのNBAやNHLもシーズンが中断し、スポーツ観戦の場も奪われた。

スポーツ大国アメリカでスポーツ中継がない異常事態の中、ある局ではスポーツキャスターが自宅から東京オリンピック(五輪)延期のニュースを伝えていた。州と市の記者会見は電話回線を使って記者が質問するリモートになり、ニュースやトーク番組もホストやコメンテーターが自宅からビデオ出演をしている。これまで当たり前だと思っていた世界が一変している。(千歳香奈子通信員)