全国高校ラグビー(1月、大阪・花園ラグビー場)で準優勝した御所実(奈良)など、全国10チームを指導するプロコーチの二ノ丸友幸氏(40)が20日、新型コロナウイルスの影響を語った。

コーチングと両立してきた「人材育成プロデュース事業」も講演会中止などの影響を受け、3月の仕事は9割減という。トップリーグ(TL)のクボタでは、現役引退後に管理職も経験。退社して「プロ」として生きてきた40歳に、逆風への向き合い方を聞いた。【取材・構成=松本航】

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-新型コロナウイルスが感染拡大。現在の生活は

「プロコーチになって、これだけ現場に出ないのは初めてです。3月に入った頃から、多くの学校でクラブ活動ができなくなりました。全国10チームと契約していますが、現在は全てが活動停止。2月の最終週から企業の研修、イベントも軒並み中止や延期になりました。これまでは年間70本ほどの講演もさせていただいていましたが、3月にはほとんど仕事がなくなりました。ほぼ9割減です」

-3月初旬からは約1カ月半が経過。変化は

「講演の仕事に関しては、3月中旬ぐらいから『オンライン』という選択肢が出てきました。中止、延期の2択から3択になったイメージ。4月に入り、企業の新入社員の研修、新しく管理職になった人たち向けのセミナーなどを、オンラインで行っています。最近2~3週間でも世の中が変化しているのを感じます」

-オンラインへの対応は

「もともと、テレビ電話は使っていました。ラグビーの現役時代に留学していたニュージーランド(NZ)の友人とは、コミュニケーションの一環で活用し、個人的にオンラインで英会話の授業も受講していました。仕事の1つである『デュアルキャリアサポート』では『今、社会人としてすべきこと』を、スポーツ選手に伝えています。契約する(パナソニックWTB)竹山晃暉選手や、(18年平昌五輪カーリング代表)平田洸介選手とのやりとりもオンラインでした」

-実際に取り組んでみて

「当然難しさはあります。同じ研修でも、顔を合わせてやるのとは全然違う。オンラインで複数の方を相手にすると、表情、顔色、リアクションが瞬時に分かりません。資料はオンライン用に一新し、話す量、速さ、内容も変更しました。例えば普通なら3時間の研修。一気に3時間するのではなく、1時間を3日に分ける提案などもします。事前に所属事務所のマネジャーなどに付き合ってもらい、リハーサルも行います」

-企業などでは新しいことを導入する難しさもある

「オンラインも、いい部分ばかりではありません。ただ、やる前にためらっているのは、もったいない。チャレンジできるものに関しては、やってみた上で『良い』『悪い』を判断することがいいと思います。コーチとして携わる御所実でも、(59歳で監督の)竹田先生に(オンライン会議システムの)『ZOOM』を紹介しました。今は平日の週5日、90人近い部員とのミーティングに活用されています。私が恵まれているのは、何か新しいことをやった時に、きちんと注意をしてくれる人がいる。大切なのは『他者評価』。逆に『自己評価』ばかりが高いのは、よくありません」

-現状に対して、どう向き合っていくべきか

「自分でコントロールできることに対して、準備をすることだと思います。例えばラグビーでも、相手チーム、レフェリー、風や気候に関してはコントロールができません。『風が強ければ?』『レフェリーと考えが合わない場合は?』。普段から高校生にも『そこに文句を言ってもしょうがないぞ』と伝えています」

-具体的な取り組みは

「忙しさを理由にスルーしていたことに着手しました。資料の整理、更新もそう。週2回は妻に任せていた料理をし、掃除機をかけるのも日課。教え子には『口だけ指導者』と言われないように、毎朝6時半からは雨が降ろうが、ランニングで体力も維持。これまでも講演などで、主体的に行動する『自考動型人材』の必要性を伝えてきました。今、自分がコントロールできる部分で、何ができるのか-。下を向いていても解決にはならない。終息した時に向けて、準備を進めていきたいと思います」

◆二ノ丸友幸(にのまる・ともゆき)1979年(昭54)6月3日、東大阪市生まれ。大阪・啓光学園中・高(現常翔啓光学園中・高)、同大でラグビーに打ち込み、02年からカネカ。廃部に伴い、NZ留学を経て、03年からクボタ。ポジションはSH。06年に現役引退し、社業専念。16年に退社し、スポーツコーチング事業、人材育成プロデュース事業などを行う。