新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が全国に発出中で、新潟県内の県立高校も5月6日まで臨時休校となっている。スポーツの現場はチーム強化に手つかずの状態で、各種目の大会も開催できるかどうか見通せない状況だ。誰もが未経験の「緊急事態」に県高校スポーツの指導者は何を考え、どんな対応をしているのか。18年全国高校総体で優勝した開志国際の男子バスケットボール部・富樫英樹監督(57)に話を聞いた。

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男子バスケットボール部は活動停止中ながら、富樫監督は多忙を極めている。開志国際は、新年度の授業開始と入学式を5月11日に予定している。同校の教頭の顔も併せ持つ同監督は今、新型コロナウイルス感染予防に関する職員会議に連日追われ、新学期に備えている。「新型コロナウイルス対策は手探り状態で、答えが見えない。バスケットの指導とは違う頭を使うので、非常に疲れる。充実感のない疲れです」。

逆にバスケット部の強化は全く手つかずの状態だ。2月28日から休校していた同校は2、3年生の始業式を15日に行ったが、緊急事態宣言が全国に拡大した16日に再度休校した。8日に予定していた入学式も2度延期。大半が寮生の男子バスケット部2、3年生28人は休校を受け、一時帰省。3月中に学校に戻り、約2週間の寮内での待機を経て4月上旬から活動している。「休校中の学内で寮に“カンヅメ状態”は心身に良くない」と学校側は教室以外の施設を寮生に開放。未入寮の新入生を除くメンバーは体育館で体を動かしてきた。

毎日の検温を義務づけられた2、3年生部員は体育館使用の前に両手をアルコール消毒。窓は全開にして、人数も絞った。2人の主将・PG石原史隆(3年)とSG小畠一真(同)が10人程度に人数を割り振り。「学校開放」の形を取るだけに、富樫監督の指導はない。練習の参加・不参加も自由だ。「学校の部活が始まり、大会の有無が分からないと、強化プランも浮かんでこない。今は暗闇の中」と指揮官。全国高体連は、26日にインターハイ開催の有無を判断する予定だ。

富樫監督は「2年前にインターハイで優勝したチームより、今年のチームの方が強いと思っていた」と“全国優勝”を視野に入れていた。ところが、その思惑に沿った強化日程は全部崩れた。3月に予定していた秋田遠征をはじめ、KAZUカップ(東京)、沖縄カップはすべて中止。絶好の強化策がつぶれ、能代カップ(5月連休中=秋田)に加え、5月下旬の台湾遠征も中止となった。

富樫監督が約2カ月間も指導に関わらないのは教員生活32年間で初めてのことだ。「(夏の)インターハイは中止も覚悟しているが、ウインター杯(来年1月)だけでもできたら…。目標を見失っている子どもたちの笑顔を復活させたい」。指揮官は新型コロナウイルス感染の早期終息を願っていた。【涌井幹雄】

◆富樫英樹(とがし・ひでき)1962年(昭37)5月19日、村上市生まれ。村上高-日体大。現役時代のポジションはPG。中学教員時代の08年と10年に本丸中(新発田市)で全国中学大会優勝。14年の開志国際開校時に高校教員に転身。18年インターハイ優勝は創部5年目で達成。08年から5年間、U-16日本代表監督を務め、09年のU-16アジア大会3位。日本代表PG富樫勇樹(26=千葉)は長男。