ラグビー元日本代表でワールドカップ(W杯)4大会連続出場のトンプソン・ルーク氏(39=近鉄アドバイザー)が、近鉄の後輩で13年に24歳で死去した中井太喜さんの名を記した「中井カップ」を創設していた。13日までにニュージーランドからコメントを寄せ、その思いを語った。

トンプソン氏は現在、母国で牧場を経営。鹿300匹、牛6頭を世話する毎日だ。1月のトップチャレンジリーグ(トップリーグ2部相当)優勝決定後に現役を引退。14シーズン在籍した近鉄には特別な思いがあった。かつて共に戦った中井さんは13年5月12日、現役のまま胃がんで亡くなった。同氏は帰国する直前の1月末に、選手が選ぶチーム内MVP「中井カップ」を用意していたという。

光り輝くトロフィーは自ら発注して調達した。「僕は2つの意味を込め、これを作った。1つ目は中井さんがいたことを今の選手、将来の選手に知ってもらいたい」。フランカーだった中井さんは激しいタックルが持ち味で、当時の監督は日本代表にも推薦。だが、3年目のシーズンを迎えられなかった。トンプソン氏は信頼されていた後輩と重ねて「2つ目は仲間の思いが刻まれた賞が欲しかった。ハードワークとリスペクトの文化を生み出すカップにしてほしい」と語った。

初代受賞者は3年目の野中翔平だった。亡くなった当時の中井さんと同じ24歳のフランカーは、賞に刻まれた思いを胸に「チームの信頼を感じる賞。プライドを持ち、愛されるチームを作っていきたい」。常に仲間のために戦ってきたトンプソン氏は静かに、その魂を引き継いだ。【松本航】