7月3日から開幕するF1の2020年シーズン開幕戦オーストリアGPに向け、レッドブルリンクでは着々と準備が始まっている。

新型コロナウイルス対策として巨大なモーターホームは持ち込まず、全スタッフが2mのソーシャルディスタンスを意識して活動し、マスクやフェースガード等の個人防護具を着用。パドック内ではチームごとに行動して他チームとの接触を避け、チャーター便で現地入りした後もホテルとサーキットのみに活動範囲を制限し、外界との接触をシャットダウン。3日以内にPCR検査を受け陰性を証明した上で、今後も5日おきに全スタッフがPCR検査を受け続ける。陽性反応者が出た際にはその担当マシンは走行が一時的に停止とされるが、レッドブル・ホンダの場合はスタッフを細かく12グループに分け、陽性反応者が出た場合にその濃厚接触者の範囲を狭くして、レース運営に及ぶ影響をなるべく抑える戦略を取っている。

ホンダは3月に行われる予定だった当初の開幕戦オーストラリアGPに持ち込んだパワーユニットをさらに進化させ、スペック1・1として持ち込んできた。

「基本的にはICE(内燃機関エンジン)の改良ですが、それ以外の細々とした改良も施して来ています。シャットダウン等の影響もあって、何でもかんでもやるというよりは、きちんと細かいところを仕上げてきたというかたちです」(田辺豊治テクニカルディレクター)

ホンダのスタッフはレッドブル側とアルファタウリ側でそれぞれチームの一部として行動しているため、チームをまたいだ接触は不可。そのため通常のコミュニケーションはできないが、事前にしっかりと対策を講じた上でこの開幕戦を迎えている。

「ホンダとしてはレッドブル担当の人間がアルファタウリのガレージに行って様子を確認したり向こうからこっちに来てコンピューターをのぞきながら話をしたりといったことが制限されていますので、インターネットを使った会議や電話でやりとりをしたり、もしくは2m以上離れたところでマスクをして大きめの声でしゃべるとか、そういったコミュニケーションの面では若干の不便はありますけど、それを補うべくやり方を決めてきていますので、うまく対応できているという状況です」(田辺豊治テクニカルディレクター)

レッドブル側もホンダ側も今季型マシンとパワーユニットの完成度には自信を持っており、マックス・フェルスタッペンとともにタイトル獲得を目標に掲げている。

現場オペレーションの全責任を負う田辺テクニカルディレクターとしては、今自分たちの手にあるマシンの性能を最大限に引き出すことに専念して開幕戦を戦うという。

「優勝とかタイトルという話もあちこち出ていますが、普段にも増してプレッシャーがあるというようなことはなく、普段通りにこの開幕戦の地に臨んできています。当然ここまで使える時間は可能な限り効率的に使って開発し準備してきたパワーユニット、そしてレッドブル側も同様にマシンを開発してきていますから、そのトータルのパフォーマンスを最大限に引き出して、ミスなく、持てる力を最大限に発揮しきって戦いたいと思っています。目指す所は当然優勝、タイトルですが、それはいつもながら相手があることですから、とにかく走ってみれば見えてくると思います」

(米家峰起通信員)