石見智翠館(島根)にとって、重たい「2点」の差になった。試合後の取材エリア。就任20年目を迎えた安藤哲治監督(47)は、東福岡との差をかみしめた。

「(12年に全国)選抜大会で準優勝した時も、決勝は2点差でした。勝負では負けていなかったけれど、負けるには要因がある。この2点の差は何か。この次につなげないといけない」

流れは最高だった。前半4分に立ってボールを動かし、NO8グアイニ優人(3年)が先制トライ。インターセプトなどもあり、前半を19-7で折り返した。

安藤監督は用意していた秘策を試合後に明かした。

「今年は2回(東福岡と)練習試合をして、2回とも後半の失点でやられました。相手が得意とするところを、逆手にとれないかと考えました」

それまで前に出ていた防御を、外へ流す防御に変えた。タックルが強い両フランカーを外に置き、そこでボールの再獲得を狙った。

だが、東福岡には違った引き出しがあった。

後半、東福岡はFW戦を仕掛けた。縦への前進で劣勢を打開した。東福岡が5点を追う後半29分。プロップ本田啓(3年)が中央ラックからボールを持ち出し、同点のトライを決めた。本田は興奮気味に言った。

「試合中に自分たちで話し合って、コンタクトのところにこだわりました。うまく攻撃できて良かった」

藤田雄一郎監督(48)もFWの健闘をたたえた。

「FWが頑張ってくれた。ホッとしました」

石見智翠館の思惑は、東福岡に覆された。鋭いタックルを何度も決めた石見智翠館CTB松本壮馬主将(3年)は「後半はFW戦でジリジリと、1個ずつゲインされた」と正直な感想を口にした。これで15大会連続の8強入りとなった東福岡は、しぶとかった。

選手だけでなく、安藤監督にも歯がゆさが残った。

「このチームをベスト8以上に行かせられなかったのが悔しい。もっと上でできるチームでした」

主将の松本も「2点差」の重みをかみしめた。思いを包み隠さずに明かした。

「ベスト16で『いい試合をした』と言われるのは正直いらない。勝たないと…」

2021年の元日。「2点差」の教訓とともに、バトンは新チームへと受け継がれた。【松本航】