4大会ぶりの優勝を目指した東福岡(福岡第1)が3点差で決勝進出を逃した。8大会連続の準決勝で京都成章に21-24で屈した。

2日前の準々決勝は東海大大阪仰星(大阪第1)と21-21で引き分け、抽選の末に4強。ロスタイム18分の死闘を戦ったライバル校の思いも背負ったが、夢はついえた。2連覇を目指す桐蔭学園(神奈川)は40-12で大阪朝鮮高(大阪第2)を下し、9日の決勝は京都成章-桐蔭学園となった。

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全てを出し尽くし、緑の芝に膝から崩れ落ちた。宣告されたロスタイム1分が経過した、後半31分。3点を追う東福岡のWTB西端玄汰(3年)は、自陣10メートルライン付近でボールを受けた。相手防御ラインの隙間を突破し、一気に加速。相手FBを外に振り切ると、逆転トライのイメージが出来上がった。残り約15メートル。追走してきた相手のタックルを受け、体はタッチラインの外に投げ出された。「やってしまった…」。ノーサイドの笛が響き渡った。

「自分がトライを決めきれず、このチームを勝たせられなかったのが悔しいです。これまでBKが足を引っ張ってきた。成章戦はBKで取りきりたかった」

約2週間前に肋骨(ろっこつ)を痛め、気持ちが崩れかけた。それでも支えてくれたのは首脳陣や仲間。「ケガは関係ないです」と言い切った。東海大大阪仰星と準々決勝を戦った2日前。後半ロスタイムは18分に及び、準決勝は抽選の末に駒を進められた舞台だった。ロック永住健琉主将(3年)は相手主将に「絶対に最後まで試合をするから、応援してくれ!」と声をかけ、思いを背負った。負けられない戦いだった。

疲労は否めない中1日。先手を奪われる展開でも粘り続けた。後半23分に痛恨のトライを許し、10点差。それでも4分後にプロップ本田啓(3年)がラック際をねじ込み、1トライで逆転の状況まで持っていった。ピッチ上では2年生SO楢本幹志朗が「こっから勝ってきたよ! 笑顔、笑顔!」とさけんだ。教え子の戦いぶりを見守った藤田雄一郎監督(48)の言葉は詰まり、目を潤ませた。

「(28-26で勝った3回戦の)石見(智翠館)さん、仰星さんの思いを、彼らが背負ってやってくれた」

21大会連続の聖地では、大切な財産を手に入れた。

「『お疲れさま。ありがとう』と言いたいです。ヒガシ(東福岡)の『粘り強く』という、新たなカルチャーを作ってくれました」

今大会の足跡は、必ずや語り継がれる。【松本航】