4月19日、札幌市役所に姿を見せた。妹で複合の安寿(21=東海大北海道)がワールドカップ(W杯)3位と世界選手権4位に入り、秋元札幌市長を表敬訪問。兄として付き添った。妹の姿を誇らしげに見つめながら、自身もいつか訪れる機会を想像した。「今日はスキー板を運ぶのを手伝ったりだったけど、自分の時は前に出て」と笑った。

その時はそう遠くはなさそうだ。22年北京オリンピック(五輪)の日本代表候補として、20~21年シーズンは3季連続のW杯開幕メンバー入り。個人戦19試合に出場した。最高16位。団体では最終戦で2位に入った。3月の世界選手権(ドイツ)では男子団体(4位)で初出場を果たした。

ただ、成績面では「1回くじけそうになった」。一時W杯メンバーから外れ下部大会のコンチネンタル杯に参戦した。約2週間、たった1人でオーストリア・インスブルックに滞在。練習場所確保も自分でやらなければいけなかった。その期間、メンタル面を整えた。昨年11月からずっと海外へ行きっぱなし。運営するオンラインサロンで支持してくれる仲間からの励ましを受け、気持ちを奮い立たせた。

約5カ月、自宅へ帰れなかった異例のシーズンを終え、進むべき道が見えた。「海外を拠点にしないと勝てないと思った」。欧州の選手はシーズン中、帰宅が可能だ。実現へ「来季よりもうちょっと先になる。五輪に出て中村直幹がいると世界中に見せて、向こうのスポンサーを取って来て生活する基盤を作る」。

企業チームに所属せず、起業家として新たな道を切り開き続ける24歳の行き先から目が離せない。【保坂果那】

◆中村直幹(なかむら・なおき)1996年(平8)9月19日、札幌市出身。札幌大倉山小5年から札幌ジャンプ少年団で競技を始める。札幌宮の森中-東海大四高-東海大北海道。17年ユニバーシアード個人、混合団体で金メダル。W杯デビューは16年1月札幌大会で38位。W杯通算70試合出場、最高13位。家族は両親と妹、弟。175センチ、63キロ。