東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(78)が8日、大会開催経費について、想定より縮減されたとしても組織委から東京都や国への返還がないとの考えを強く示した。

一通りの質疑応答が終わった後、自ら「いいですか」と切り出してマイクを握った。無観客開催を受けた経費削減に関する質問に対し、補足する形で「既に一部記事に出ていますが、お金が余って、東京都や国に返るという趣旨の報道がある。これは理解できない。我々からお金が返ることなんてことは全くない」と力説した。

経費を巡っては、都や国による追加の公費負担が発生しない見通しとなっているという。新型コロナウイルス感染症対策で大半の会場が無観客になり、約900億円を見込んでいた入場料収入をほぼ失った。一方で閉幕後に精査したところ運営費も大幅に減るところとなり、予算より1500億円規模で少なく済む可能性が出ていた。これまでは追加負担が避けられないとの見方が強かった。

開催経費は昨年12月の予算(第5版)公開の時点で組織委、都、国の負担を合わせて総額1兆6440億円を見込んでいた。精査が進められている最中だが、総額が1兆5000億円以下になる可能性も。武藤事務総長は具体的な数字について「明らかになっていない。まだ詳細も聞いていない」と明言しなかったが、当初より経費が掛からなかったとしても、その分が返還されるわけではない、との認識に力を込めた。「混乱するといけないので、この機会にそういうことはないと強調させていただく」とも念を押した。

開催経費の分担は組織委7210億円、都7020億円、国2210億円で合意している。【木下淳】