27回目の出場で初優勝を目指した国学院栃木は、東海大大阪仰星(大阪第2)に5-36で敗れた。毎年優勝候補に名を連ねる強豪の圧力に屈し、序盤から自陣でプレーする機会が多く、なかなかボールを前に運べなかった。敗色濃厚となった終盤に連続トライを許すなど、前後半で5トライを喫した。

栃木県勢初の決勝進出という快進撃も、ついにストップしたが、完敗にも収穫はあった。前半22分、1年間磨き上げてきたモールから押し込み、フッカー吉田温広がこの日チーム唯一のトライ。「やってきたことは間違っていないんだと感じた」という3年生は、「後輩たちにつながる1トライだった」と感情を込めた。

今季は超高校級の選手がいなければ、日本代表候補すら誰も選出されなかった。そんな中で指揮官は「全員が60分間しつこく粘り強く戦う」ことを説いた。愚直に、泥臭くタックルを続ける雑草軍団の中で、主将の白石和輝(3年)はキーマン。約90人の部員を束ねる精神的な支柱なだけではなく、強固な守備でも欠かせない存在だった。

初戦となった2回戦の松山聖陵(松山)戦で、白石は無念の負傷交代を余儀なくされた。その後、脳振とうと診断され、規定により残りの試合の出場ができなくなった。悲報を知らされ涙を流す仲間たちは「白石の分まで戦おう」と、この不運をバネに結束力を高めた。

3回戦で流通経大柏(千葉)戦を破り、91回大会(11年度)以来となる8強、続く準々決勝で長崎北陽台を下し初の4強入り。さらに準決勝では3連覇を狙う桐蔭学園(神奈川)を破って決勝に進んだ。

決勝戦では給水係をしながら、フィフティーンを懸命にサポート。敗れはしたが全力で戦った仲間たち。ゲームキャプテンを務めた田中大誠(3年)に「ありがとう」と感謝の言葉を贈った。

「3年前にはこんな大舞台でチャレンジできるとは思ってなかった。日本一努力してきたので、悔いはないです」と白石。「コクトチ」の歴史の1ページを刻んだことに満足しながら、後輩たちにさらなる活躍を期待した。【平山連】