【モンペリエ(フランス)=松本航】男子ショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が初優勝を飾った。

フリー202・85点で世界歴代3位の合計312・48点。日本男子の優勝は17年の羽生結弦以来5年ぶりで、高橋大輔、羽生に次いで3人目(4度目)となった。

鍵山優真(オリエンタルバイオ/星槎)が2位、友野一希(セントラルスポーツ)が6位。第3日(25日)の女子フリーでは坂本花織(シスメックス)が初優勝し、日本男女アベック優勝は14年(羽生結弦、浅田真央)以来の快挙となった。

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【フィギュア】宇野昌磨が初の世界一!鍵山優真2位、友野一希6位/世界選手権男子フリー詳細

無我夢中で抱きつき、宇野が心から笑った。312・48点。初めて世界の頂に立ち、身を委ねたランビエル・コーチに頭をさすられた。長かった。世界選手権、グランプリ(GP)ファイナルと2位が2度ずつ。「シルバーコレクター」-。周囲はそう呼んだ。それでも日々の小さな苦しみから目を背けず「なかなか優勝を取ったことがなかった。初めて世界選手権で1位になれたことがうれしく思います」と笑う日が来た。

大きく、そして強弱をつけた。最終盤のステップ。ランビエル・コーチ振り付け「ボレロ」の見せ場で「思い切りやって、転んでもいい」と必死に滑った。レベルは最高の4。ジャッジ9人中6人が出来栄えで最高の5点をつけた。数字以上に2人で積み上げた答えを求めていた。「(同コーチが)納得できる演技をしたい。それがかなったと思います」。4回転4種5本のジャンプもそろえきり「ボレロ」は出来上がった。

元々は生粋の負けず嫌い。趣味のゲームも周囲がやっていない時に練習し、勝つのが喜びだった。だが、スケートは少し違った。「順位を求めてスポーツをするのは得意じゃない」。自分のために滑る思考を後ろに回し「支えてくださった方のためにと考えた」。個人競技だが、いつも周囲への感謝を胸に滑ってきた。

表彰台に立ち、日の丸を見つめた。涙はなかった。「僕としては優勝がゴールじゃない。『ここからスタートするんだ』というのが心にある」。2季前、8位に沈んだGPフランス杯でもらった大歓声。同じ国で、最高の恩返しができた。