キング内村航平と、ひねり王子・白井健三のダブル世界王者の帝王学を伝授された土井陵輔(20=日体大)が、初の世界選手権代表をつかみ取った。

今大会だけの6種目合計では85.798点で、五輪王者の橋本大輝(20)に2.266点差をつけてトップをマーク。4月の全日本総合の持ち点と加え、合計255.995点の3位で初代表をつかみ取った。

笑顔が止まらなかった。「本当にうれしいです」。4月の全日本前に、日体大で指導する白井コーチから「あんたの持ち味は笑顔だよ」と言われ、気持ちがほころんだ。「自分の演技に集中することができた」と、全日本を3位で終えると、この日も笑顔で3位をキープ。初代表に輝いた。

体操の美しさを判定する演技点(E得点)を重視する。それは、日体大、そして日本男子の伝統だ。土井は、この日、6種目中、つり輪を除く5種目で14点台をたたき出し、美しい体操を演じた。「一般の方が見ても、体操うまいなという演技を目指してきた」。

今年3月ごろから、元世界王者で引退した内村航平さん(33)が、母校の日体大を拠点として活動。土井も、ほぼ毎日、内村さんの指導を受ける。その中で、内村さんのお家芸とも言われた床運動で、土井は「好きにやったらいい」と、最高の褒め言葉をもらった。その床運動で、今回、トップの14.733点をマークした。

五輪王者を「大輝」と呼ぶ同期だ。「雲の上の存在過ぎて、ライバル視するのもずうずうしいぐらい」と笑う。岡山・関西高1年の時に、千葉・船橋高の橋本と出会った。「こんなに強い子がいるんだと思っていたら、いつのまにかオリンピックで金メダルを取っていたのでびっくり」と、ここでも笑顔だ。

しかし、笑顔の下には、少しライバル心も見える。「1人の人として、すごく尊敬した。ただ、同期という部分では、すごい悔しかった」。今回は、初めての代表として、10月に同じ世界の舞台に立てる。「やっと少し近づけたかなという思い」。少し胸を張った。【吉松忠弘】

○…世界選手権の代表は5人。すでに決まっている橋本を除き、NHK杯個人総合上位2人がまず決定。残りの2人は、NHK杯個人総合10位以内から1人と、種目別枠1人で、チーム貢献度を考慮し、6月の全日本種目別選手権後に選ばれる。