小原拳哉(28=パーク24)が、東京オリンピック(五輪)金メダルの永瀬貴規(29=旭化成)に「人生初勝利」し、GS初優勝を遂げた。

先にポイントを取った方が勝つゴールデンスコア方式の延長戦に突入し、永瀬が肩車にきたところを力尽くの隅返しで返し、技ありを奪った。

ポイントが有効かどうか映像確認があった後、主審から勝利を告げられると、両手を突き上げてガッツポーズ。「拮抗(きっこう)した試合だったので気が抜けなかった。1回も勝ったことがなかったので、うれしかった」と1歳上の金ゼッケン選手からの初白星を喜んだ。

神奈川・東海大相模高3年時、全日本ジュニア決勝で筑波大1年の永瀬に敗れるなど、高校時代から全て負けてきた。今年4月の全日本選抜体重別(福岡)準決勝で屈したことも含め「団体戦も入れて7、8回は戦ったことがあるんですけど」未勝利だっただけに、普段はクールな表情を崩さない男も笑みがはじけた。

敗戦の中で手の内は知っており「後半に強い選手なのでスタミナを温存しながら。普段、肩車を仕掛けてくる選手ではないので、焦りがあったのかな」と思いながら「その返しは得意だったので」と自慢の展開で畳上にひっくり返した。

4月には、体重無差別の全日本選手権でベスト8。81キロ級ながら腕力と組み手はトップクラスで、ついに自階級でも初めてGSを制覇した。

「組み手はコロナ禍の中で徹底して練習していた。反対に、この大会の1カ月前まで3年間くらい、外国人と組んだことがなかったんですけど、対策は特に。日本の81キロ級はパワーも技術も負けていなくて強いので」と国際舞台を意に介さなかった。

10月の講道館杯(千葉)に続く優勝。何より最強の金メダリストを破れた結果に「うれしい。いいアピールになった。今まで柔道選手は24、25歳くらいがピークだったけど、所属の海老沼(匡)先輩や橋本(壮市)先輩も(30代で)ガンガン強くなっていたので、自分も続きたい」と、勝ってなお成長過程にあることを実感していた。【木下淳】