ショートプログラム(SP)首位の坂本花織(22)が2連覇で世界選手権(23年3月、さいたまスーパーアリーナ)の切符をつかんだ。フリーもトップの155・26点を記録し、国際スケート連盟(ISU)非公認ながら今季自己ベストの合計233・05点。SP2位で同門の三原舞依(23=ともにシスメックス)が合計219・93点の2位で、6季ぶりの世界選手権代表を確実にした。初出場で14歳の島田麻央(木下アカデミー)が合計202・79点で、ジュニア勢3年ぶり表彰台となる3位に入った。

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総立ちの観衆の拍手に包まれ、坂本は腰の前で小さく右手を握った。「きつくて、いつもみたいにガッツポーズできる余裕がなかった。そこまで出し切れました」。最終滑走。直前の三原の高得点にも心は乱れない。冒頭のダブルアクセル(2回転半)は出来栄え点(GOE)で驚異の満点を引き出し、ジャンプ6つを降りた。最後はクルクル回って跳ぶ3回転ループを着氷させ、あとは滑り抜くだけだった。演技構成点は10点満点の9点台中盤を3項目そろえ、強く、表現豊かな世界女王がそこにいた。

自ら立ち上がった。2週前のGPファイナル。フリーの失速でSP首位から5位に沈み、ホテルで泣いた。吹っ切れて帰国後は走り込み「心肺機能に余裕が出た」と自信が生まれた。昨季は北京五輪で銅メダル2個、世界選手権で初優勝。今季空回りしていたエンジンが、年の瀬に加速した。

仲間を助け、支えられた。節目の10度目出場となり「やっと2桁にきたか」と笑った。全日本選手権はジュニア時代の初出場から9年がたち、立場は変わってきた。今年1月、日本学生氷上選手権が行われた北海道・帯広市で2学年下の三宅咲綺と食事した。かねて交流のあった後輩は昨年の全日本選手権SPで26位に沈み、意気消沈していた。

つらいなら、神戸においで-。

背中を押し、5月に三宅が岡山から移籍してきた。練習で励まし合い、休日はモーニングを楽しんだ。買い物での“ファッションショー”はお決まり。神戸のアウトレットで購入したサメのバッグを愛用し、今大会前に2人そろって髪にハイライトで色を入れた。三宅はSPで躍進。幼少期から競い合ってきた三原と同門3人で最終組を彩った。

花織もやれば、ちゃんとできるから-。

中野園子コーチの言葉を信じ、堂々と三原に続いた。2連覇が懸かる世界の舞台へ、意欲は増している。

「このきっかけを無駄にしたくない。追い込んで、追い込んで、最高の世界選手権を迎えたいです」

クリスマスイブの夜に、笑顔が映えた。【松本航】

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