ついに、ついに、大きな夢が実現した。古川学園(宮城)がフルセットの末、誠英(山口)に3-2で逆転勝ち。

古川商時代の99年以来、23大会ぶり4度目の春高日本一を成し遂げた。U-20日本代表セッターの熊谷仁依奈主将(3年)が、チームメートを生かすトスワークとキャプテンシーでけん引。世界での苦い経験を糧に21年の4強、昨年の準優勝からチームを押し上げ、国体に続く本年度「2冠」に導いた。

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熊谷の目にうれし涙があふれた。もう後がない第4セット(S)。自分が上げたトスを仲間が決め、2-2のタイで迎えた第5S。いきなりの5連続得点でリードを広げ、悲願達成の瞬間を迎えた。「苦しくても頑張ってきたことが日本一につながって本当に良かったと思うより先に涙があふれてきました」。

常にチームの司令塔を担ってきたが、苦い思い出がある。昨年7月のU-20アジア選手権で日本は優勝したが「自分の強気なトスがどれだけできるか楽しみで行ったけど、自分の力は発揮できなかった」。代表ではベストセッター賞に輝いた加地春花(19=V1トヨタ車体)がレギュラーを務め、熊谷は控え組。そこで感じた思いをチームに戻り、主力組と共有した。

「コートに立てることは、すごく幸せなこと。25-24とか接戦の試合を苦しいと考えるのではなく、Bチーム(控え組)のために頑張ろうと思える選手になることが大事。試合に出られない人のためにもっと頑張らないといけない」

日本一になるため秋田からやって来た。岡崎典生監督(54)は昨夏の全国高校総体前、熊谷についてこう語っていた。

「入学した時から日本一を目指して頑張ってきた子なので、この1年にすごくかける思いが私にも伝わっています。日本一になるべき子だと思います。恥ずかしくない努力をしているので、本当に勝たせてあげたいし、勝ちたいです」

同総体は準優勝。宮城単独チームで挑んだ国体で優勝し、集大成の今大会。初戦から準々決勝までは熊谷の左手には「楽しむ」と書かれていたが、前日7日の準決勝からは「完遂」に変わった。その言葉の重圧に負けず、現校名での初優勝をチーム史に刻んだ。

「自分たちの代で必ず岡崎先生を日本一にさせようと言っていた。先生が自分に費やしてくれた時間も相当ですし、本当に先生のために最後は日本一を取りたいと思って、実現できたのは本当に良かった」

2年連続で悔し涙を流した「1月9日」は、もう過去のこと。今年の1月9日は、優勝を実感する朝日が、最高の笑顔を照らしてくれる。【相沢孔志】

○…阿部明音(3年)が両軍2位の30得点で歓喜をもたらした。同1位の36得点を挙げたタピア・アロンドラ(3年)、サウスポーの南舘絢華(3年)に負けじと、粘り強い守備でボールを上げる「泥ん子バレー」を掲げる相手から得点を積み上げ、チームの窮地を救った。「3年生になってから日本一を取るためにお互い厳しいことを言い合った。本当に苦しい中、このメンバー全員で乗り越えたことが日本一につながった」と言い切った。