熱戦の余韻が残るバスケットボール会場で、プロポーズ大作戦が成功した。

告白の儀式が行われたのは、東京オリンピック(五輪)やパラリンピック会場にもなった有明アリーナ。Bリーグ3部相当(B3)の東京ユナイテッドBCの竹内峻アシスタントコーチ(31)が試合後のコート上で、ビーチバレー選手の丸山紗季(31)に愛を告げた。

試合は、ホームの東京ユナイテッドBCが金沢武士団に82-67で快勝。勝利セレモニーの最後に、場内MCが「今日はなんと、もう1つセレモニーがあります」とアナウンスした。マイクを渡された竹内コーチに呼びかけられると、スタンドで観戦していた丸山は驚きの表情を浮かべながらコート中央へと向かった。

改めて丸山と向き合った竹内コーチは、真っすぐな目でこう伝えた。

「紗季さん、付き合ってから9年以上、そのうち8年ぐらいが遠距離で、寂しい思いもさせたと思う。でも俺がつらいときにもずっとそばにいてくれて、今の自分があるのは紗季のおかげです。これからもたくさん助けてもらうと思うけれど、ずっと一緒にいてほしい」

そして「愛しています。俺と結婚してください」と伝えると、丸山は「よろしくお願いします」とうなずいた。その後、ふたりは抱擁。選手らは竹内コーチを胴上げした。

試合後の会見で早水将希監督は、「想像を超えたぐらい感動しちゃった」。昨年11~12月ごろ、監督自らが竹内コーチに、コート上でのプロポーズ大作戦を提案したことを明かした。

指揮官として「勝ってセレモニーを迎えなければという、そのプレッシャーも僕にはあった」と打ち明けつつ、「峻さんの人柄もあるから、スタッフたちもみんな動いてくれた。峻さんじゃなければ提案していなかったかもしれない」。選手たちに余計なプレッシャーを与えないよう、大作戦決行はトップシークレットとして進んだという。

試合はチームがリードする展開で終盤に向かった。早水監督は「コーチ本人も言っていたけれど、第4クオーターは僕の話が聞こえていないぐらい緊張していたと思う」と笑顔で振り返った。「こういう機会をセッティングしてくれ、みんなでお祝いできことに、東京ユナイテッドBCの温かさを感じた」と運営スタッフにも感謝した。

この試合のMVPに選出されたアンジェロ・チョルは、B2青森時代から竹内コーチと過ごしてきた。「人間的にも素晴らしく、バスケを熟知している人。尊敬している」とたたえて祝福した。【奥岡幹浩】

◆竹内峻(たけうち・しゅん)1991年(平3)6月27日生まれ、青森県弘前市出身。秋田・能代工業高から日本体育大へ進み、14年よりバスケットボール男子B2青森ワッツのチームスタッフに。チームマネジャーやアシスタントコーチなどを務め、22年よりB3東京ユナイテッドBCのアシスタントコーチとなる。キャッチコピーは「目は細く、心は広く。」

◆丸山紗季(まるやま・さき)1991年(平3)12月23日生まれ、横浜市出身。神奈川・大和南高から日本体育大に進み、14年にバレーボール女子V1のKUROBE入団。17年から主将を務めた。21年に退団し、ビーチバレーへ転向。地元法人マーチオークシーに所属し、もぐもぐダイレクト広報として24年パリ五輪出場を目指す。母由美さん(旧姓・江上)はバレーボール女子日本代表の元主将で、84年ロサンゼルス五輪銅メダル。