埼玉が大接戦をラストプレーの逆転で制した。

5点を追う後半39分過ぎにプロップのヴァルアサエリ愛(33)が同点トライ。ここでホーンが鳴り、最後のキックをSO松田力也(28)が決めた。

先制は埼玉だった。敵陣で相手キックを受けたFB山沢拓也(28)が個人技で前進し、右大外のWTB竹山晃暉(26)へパス。ボールが手前に戻ってくる回転をかけて前へ蹴り出し、インゴール内ギリギリで押さえてトライを奪った。前半5分の早業だった。松田もゴールを決めた。

追うキヤノンは5分後にトライを奪い返す。敵陣ゴール前まで攻め込むと、南アフリカ代表SHファフ・デクラーク(31)が自ら潜り込んでトライ。SO小倉順平(30)が後方を流れる動きを尻目に、守備を欺いた。前節の初に続く2戦連続のトライとなった。

その後は拮抗した展開となり、2点差のまま。キヤノンはフランカー嶋田直人(31)が前半だけで3ターンオーバーを奪うなど、守備で接戦に貢献した。

ハーフタイムは、今季もTRFのDJ KOOが登場。千葉・日体大柏高時代にラグビー部でSOだった愛好家が盛り上げた後、後半が始まった。

4分、再び竹山が同じプレーで突き放す。また前に蹴り出すと、ボールが大きくバウンドする。ここに走り込んだ竹山が守備より高く跳び上がり、キャッチしてインゴールへ。TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の確認が入ったが、明らかなセパレートがないとして、この日2つ目のトライが認められた。ゴールも決まって14-5とリードを広げた。

直後、キヤノンが不運に見舞われる。NO8アマナキ・レレイ・マフィ(31)がラックからトライ寸前まで攻め込んだが、届かず倒れ込んだ。膝か足首を負傷した模様で、本人の叫び声が響き渡る中、担架で運ばれた。2試合連続3トライと絶好調だった男が無念の退場となった。

嫌な雰囲気だったが、キヤノンボールで再開。すぐトライを取り返す。味方が地面にボールを置き、デクラークが走りながら拾ってFBエスピー・マレー(33)に渡すサインプレーがはまり、ゴールも決まって再び2点差とした。後半7分だった。

その後は一進一退の攻防が続いたが、終盤に動く。34分、NO8シオネ・ハラシリ(23)が中央で持つと堀江翔太を吹き飛ばし、ヴァルアサエリ愛のタックルをはがして、トライ確信の左手を突き上げながらインゴールに飛び込んだ。マレーのゴールも入り、ついにキヤノンが試合をひっくり返した。

横浜にとって13年以来10季ぶりの埼玉戦勝利か。しかし、王者の意地が上回った。約1500日、敗れていない埼玉が残り1分を切ってから逆転した。ゴール前でフェーズを重ね、最後はヴァルアサエリ愛が守備網の穴を突いた。

ホーンが鳴って負けはなくなり、松田がキックを決めて試合終了。最後のプレーで逆転して開幕6連勝を達成した。横浜は惜しくもチャンピオン相手の勝利を逃した。