前回王者の戸上隼輔(21=明大)が4-2で激戦を制し、2連覇を果たした。14年から4連覇した水谷隼氏(33)以来、6年ぶりの連覇達成するとともに、張本智和(IMG)の3冠(男子シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目制覇)を阻止。プロレス好きの21歳は激闘を終えた後の場内インタビューで「皆さん、元気ですか!」と笑顔で絶叫した。

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「元気ですか!」。連覇を果たした王者の声が明るく響いた。プロレス好きの戸上が優勝インタビューで叫んだのは、アントニオ猪木さんの名ゼリフ。「どうしても優勝して、皆さんにこのフレーズを言いたかった」。会場を引き揚げる時には、猪木さんの登場曲「炎のファイター~INOKI BOM-BA-YE~」が流れ始めた。スタッフによる粋な計らい。さわやかな笑顔がはじけた。

迷わず行けよ、行けばわかるさ-。魂を燃やしてコートに立った。1-1で迎えた第3G。ジュースで4度もゲームポイントを握られた。「このゲームが必ず勝負の鍵になる。死ぬ気で頑張ろう」。迷うことなく、チキータで攻める。14-15から3連続得点。ゲームを制すと、気迫のこもった赤い顔で拳を握り締めた。

決勝で対した張本は、昨年10月の世界選手権男子団体で、9連覇中の中国から2勝を奪った。戸上は2敗だった。その大会期間中に猪木さんは息を引き取った。「勇気を与えてもらったので、結果で恩返しをしたい」。心の中で誓った。そこからプレー動画を見続け、ウエートも強化。今大会前も「卓球づくしの10日間だった」と言い切れるほどの調整をした。

“年長者”としての意地も感じた。前回大会の4強は、戸上以外の3人が20代後半の顔ぶれ。しかし、今年の4強は21歳の戸上が最年長だった。「自分が日本を引っ張っていかないといけないと気付かされた」。魂はさらに燃えた。

不退転の覚悟でつかんだ2連覇。1年前は「卓球界で100年に1人の逸材になりたい」と言った。決意はより明瞭なものへ。「オリンピックで金メダルを取って、100年に1人と言いたい」。パリ五輪の男子シングルス選考レースは3位に浮上した。日本一では満足できない。猪木さんばりの闘魂で、世界一をつかみにかかる。【藤塚大輔】

◆戸上隼輔(とがみ・しゅんすけ)2001年(平13年)8月24日生まれ、三重県出身。山口・野田学園を経て20年に明大入学。18年から全国高校総体男子シングルス2連覇。22年全日本選手権で男子シングルス、男子ダブルスの2冠。同年の世界選手権男子団体代表。戦型は右シェーク攻撃型。大のプロレス好き。身長170センチ。