ショートプログラム(SP)15位と出遅れた渡辺倫果(20=TOKIOインカラミ/法政大)は131・91点を記録し、合計192・81点とした。総合10位で初舞台を終えた。

紫の新衣装でリンクインし、フリー曲「JIN」に合わせてさっそうと滑り出した。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)は転倒となったものの、その後のループ-トーループの連続3回転ジャンプ、3回転ルッツ-ダブルアクセル(2回転半)の連続ジャンプは着氷させた。

「要素的には納得のいくものではなかったんですけれど、ただこうしてたくさんの方に支えられて、応援してくださって、本当に今大会はそれが特に感じられる試合だったんじゃないかなって思っています」。

後半の3回転フリップはバランスを崩し、片手をついたが、真剣なまなざしをたたえて滑り終えると、リンクの中央で何度かうなずいた。

「先生とも『また来年、世界選手権に戻ってくる』と誓ったので。まだまだここはスタート地点じゃないかな」。

自ら「イレギュラー」というほど、異例の出世のシーズンだった。昨秋に国際大会初優勝を飾り、GPシリーズではスケートカナダで初出場初優勝。3回転半と巧みなスケーティングで、日本の新ヒロインとして羽ばたいた。

たどり着いた舞台。結果は厳しかったが、涙はこらえた。むしろ、泣いていたのは恩師の中庭健介コーチだった。コロナ禍で練習拠点にしていたカナダから帰国を余儀なくされた後、師弟関係を築いてきた。

演技前、師の顔がこわばっていた。

「パンって叩いて、『表情硬いよ』って言って(笑い)。先生からは『笑顔で帰っておいで』っていう風に言われたので」。

失敗はあったが、その通りに変えると、今度は泣いていた。

「『ここに戻ってくるんだから、そんなの今泣いたら今後もたないよ』って言って。(振り返ると)いや、すごいな、大丈夫かな、これ(笑い)余計な事を言わないように言われそうですね(笑い)」。

立場が逆? のような師弟関係も、信頼の証。コーチを叱咤(しった)することで、自らの気持ちも強く保てた。

飛躍の最後は思うような結果ではなかった。ただ、それを「スタート地点」と呼べることが、山あり谷ありのスケート人生を送ってきた贈り物かもしれない。

再び師弟で。来年の世界選手権の舞台は、第2の故郷、カナダだ。

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