柔道界に、今度は金銭に関する疑惑が浮上した。全日本柔道連盟(全柔連)の強化委員会が助成金を支給された指導者から金銭を徴収していたことが14日、発覚した。助成金はトップ選手の指導者に日本スポーツ振興センター(JSC)から支給されたもので、年間120万円のうち40万円を指定された口座に振り込ませていたという。全柔連の上村春樹会長(62)は事実を認め、早急に調査することを明らかにした。

 上村会長は「強化委員会の中のことで、把握していませんでした」と、疲れ切った表情で話した。多額の「協力金」徴収は08年北京五輪以降。「互助会的なものだと思う」と同会長は説明し、使途として遠征での会食費、外国人指導者への接待費、講習会などの経費をあげ「私的な流用はないと思う」。強化委員の個人口座で管理されたが、領収書や帳簿はないという。

 JSCの助成金は、トップ選手と指導者に支給されるもの。世界選手権の好成績もあって、12年度は47人の指導者が受けている。上村会長は「外国人指導者とのコミュニケーションも、指導の上で重要だと思う」と説明したが、JSCの担当者は「競技力向上のために支給する個人助成から直接徴収して接待費などに充てていたら目的外使用になる」という見解を示した。

 もともと強化委員会には「強化留保金」と呼ばれるものがあった。遠征時の餞別(せんべつ)や強化委員から集めた金をプールし、会食などに使用していた。助成金などなかった二十数年前は数十万円程度。それが、助成金を「原資」に数百倍へと膨れ上がり、残高は2000万円になった。

 昨年11月に就任した斉藤仁強化委員長は、吉村和郎前委員長から引き継いだ時「驚いた。どうしてこんなに金があるのかと思った」という。十分過ぎる残高に指導者からの徴収をやめ、会計士に相談して帳簿もつけるようにした。前日の指導者フォーラムの経費も、そこから支払われた。

 自身の責任も問われることになる上村会長は「詳しいことは分からない」と繰り返した。何人から徴収していたのか、何に使われたのか、なぜこういうことが起きたのか。午後にはJSCに出向いて経緯を説明。早急に調査して報告するよう求められたという。「外部の方に調査をお願いし、できるだけ早く実態を把握したい」。相次ぐ不祥事に疲れ切った表情で話した。

 ◆昨年の不正受給問題

 日本近代五種協会、全日本テコンドー協会、日本馬術連盟などが国庫補助金を使った専任コーチらの報酬や、サッカーくじを財源とする助成金の一部を寄付の形でスポーツ団体に還流していた。各団体は加算金を含めた国庫補助金、助成金を文部科学省とくじを運営する日本スポーツ振興センターに返還した。JOCは今年1月の理事会で、前事務局長が専任コーチを兼務した時期が約2年あったとして、日本近代五種協会に、13年度の補助金を2割減額する処分を決めた。