<フィギュアスケート:グランプリシリーズ第4戦・NHK杯>◇8日◇東京・国立代々木競技場

 エース高橋大輔(27=関大大学院)が、復活した。冒頭の4回転トーループを決めて加速。すべてのジャンプを成功させて、国際スケート連盟(ISU)公認大会のSPで世界歴代2位、日本歴代最高の95・55点でトップに立った。4位に沈んだ10月のスケートアメリカでニコライ・モロゾフ・コーチ(37)から叱責(しっせき)されて覚醒。日本男子を支えるエースが、会心の演技で再スタートした。

 トンネルを抜けると、日本歴代最高点だった。高橋は、4回転トーループを完璧に決めた。その後もトリプルアクセル、3回転ルッツ+3回転トーループも成功。観衆総立ちの演技を終えて、拳を握った。笑顔は一切ない。エースのプライドが全身からにじみ出た。

 「久々に会心の演技といえるものができた。(得点は)こんなに出ると思ってなくて、びっくりした」

 リンクサイドでモロゾフ・コーチと抱き合った。涙を流す同コーチの横で95・55点のコールを聞いた。世界選手権3連覇のパトリック・チャン(カナダ)に次ぐ世界歴代2位。昨年NHK杯での羽生結弦の日本最高95・32点を上回った。

 10月19日、米デトロイト。4位だったスケートアメリカを終えた深夜、モロゾフ・コーチの声が響いた。「どういうことだ!

 お前にとって簡単なジャンプだ。五輪に行きたいのか」。ループとサルコーに失敗した高橋は、やる気がないように映った。高橋は「痛いところをつかれた」。同コーチの直言が心に刺さった。

 若いライバルの台頭、成功しない4回転ジャンプ。エースは「本当に五輪に行けるか。恐怖、不安があった。他の選手に比べて、五輪に行きたい気持ちが少ないと感じていた」。デトロイトからの帰国後は、無心でジャンプを跳び続けた。

 「自信を取り戻すという気持ちで来た。ちゃんとやれば認めてもらえる。まだ100%じゃない。まだいけるという思いもある」。今日9日のフリーで勝利をつかむことでエースの帰還が完成する。【益田一弘】