ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は20日で開幕まで半年を迎えた。日本代表は現在、スーパーラグビー(SR)の日本チーム「サンウルブズ」と、代表候補選手で編成した「ウルフパック」の2チームを並走させながら、強化を続けている。就任から2年半が経過したジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(49、HC)がインタビューに応じ、日本代表の現状、残り半年間の課題などを語った。【取材・構成=奥山将志】

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16年にウェールズを3点差まで追い詰め、17年はフランスと引き分け。昨秋もイングランドと善戦を繰り広げるなど、15年W杯後の日本は強豪との対戦の中で成長を続けてきた。指揮官は現在のチームに確かな手応えを感じつつ、半年後のW杯開幕を見据えている。

ジョセフHC 狙い通りにきている。W杯までトップリーグ(TL)の試合もないし、専念するのはただ1つ。W杯で勝つこと。トップ8を目指す。

勝負の19年。代表選手に対し、昨年末から約6週間の長期オフを与え、心身のリフレッシュを求めた。2月からは、一部の若手選手は「サンウルブズ」で経験を積ませ、リーチら主力は「ウルフパック」として基礎練習からスタート。選手の状況によって準備のプロセスを変え、今月末からいよいよ実戦に入っていく。

ジョセフHC これまで日本の選手はSR、TL、代表と、ほぼブレーキがなかった。コンディションが整っていない中で、急ピッチで鍛えるからけがもする。昨年11月の代表戦も、堀江、レメキ、松島らキープレーヤーが不在だった。まずは体を万全にすること。ここから、W杯に向けた本格的な準備に入っていく。

4~5月は、ウルフパックが国内外で5試合の練習試合を行い、サンウルブズはSRのシーズンを戦っていく。2チーム間で選手を行き来させながら、実戦の中で強化を進め、6月の強化合宿(宮崎)で代表を招集する。9月2日締め切りのW杯メンバー最終登録31人の枠を巡り、現在約60人いる候補選手の競争もさらに激しさを増していく。

ジョセフHC 宮崎合宿は35~40人程度を考えている。ポジション別で見れば、WTB、FBは層が厚い。フランカー、NO8も9~10人の選手がいるが、W杯では5~6人と、競争率が高い。ポジションによっては、試合で多くのチャンスを与えていきたい。

今後の強化については、「一貫性」を重要視する。強豪と互角に渡り合ったかと思えば、格下に苦戦。精神的な強さこそ、重圧がかかるW杯では重要な要素となると力説する。3月の合宿ではSRの海外チームを指導するメンタルコーチも招いた。

ジョセフHC チームとして最も鍵になる部分だと思っている。日本人は足も速く、フィットネスも高い。ただ、瞬間のチャンスをものにするには、精神的な強さが必要。代表の選手たちは強豪校からTLの強豪に入り、常に成功を味わってきた。だが、日本代表は成功を収められていない。足りなかったのは精神力。体力と同時に、そこを鍛え上げる必要がある。

ニュージーランド代表として95年W杯で準優勝を経験し、同年から02年まで日本のサニックスでプレー。99年W杯には日本代表として出場した。ピッチを離れれば日本語も話し、刺し身、ビール、サウナをこよなく愛す。得意な歌はTHE BOOMの名曲「島唄」。10年以上暮らす日本に特別な思いがあるからこそ、W杯にかける思いは強い。

ジョセフHC W杯で強豪に勝つことは、弱小だったサニックス時代の経験と似ている。コーチとして考えるのは、どこで選手に自信を植え付けるか。日本は勝った歴史がないから、勝ちでは自信は得られない。練習の積み重ねの中で自信をつけていく。日本は確実に良い方向に向かっている。今の状態のまま、残り半年間積み上げていき、9月にピークを持っていく。

◆ジェイミー・ジョセフ 1969年11月21日、ニュージーランド(NZ)生まれ。オタゴ大卒。NZ代表20キャップで、95年W杯準優勝。95~02年サニックス所属。日本代表は9キャップで99年W杯に出場。引退後の11~16年8月までスーパーラグビーのハイランダーズでHCを務め、15年優勝。ポジションはフランカー、NO8。家族は妻と1男3女。足のサイズは32センチ。196センチ、110キロ。

○…日本代表候補合宿は19日、沖縄・読谷村で行われ、グラウンドでの練習を打ち上げた。ジョセフHCは、「セットプレーからの攻撃など、来週からの実戦に向けて強度の高い練習ができた」と総括。2試合の練習試合が予定されている、25日からのニュージーランド遠征に向け「選手も試合を楽しみにしているし、自分たちの現状を知る良い機会になる」と話した。