日本代表WTB松島幸太朗(26=サントリー)が、3トライの大暴れでチームを勝利に導いた。

W杯開幕戦のロシア戦前半11分に、日本の今大会初トライをマークし、前半終了間際に2つ目。後半28分にはボーナスポイント(勝ち点)獲得となるチームの4トライ目を奪い、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。初の8強入りを目指す日本代表(世界ランク10位)は30-10でロシア代表(同20位)に逆転勝ち。1カ月半、日本列島が揺れるビッグイベントが開幕した。

超満員のスタジアムが松島のスピードに酔いしれた。狙っていた。後半28分、自陣右中間でSO松田からボールを受けると、前方のスペースを見つけた。相手2人の間を巧みなステップですり抜け、一気にスピードを上げた。追いかけてくるロシア選手を置き去りにし、約40メートルを独走。インゴール中央に飛び込み、ボーナスポイントを得られるチーム4つ目のトライを奪い、勝利を決定づけた。

試合2日前の公式会見で、CTB中村から「松島が3トライするって言っていた」とばらされたが、「あの言葉でハットトリックを意識してプレーできた」。“公約通り”の大暴れで、チームを勝利に導いた。W杯で、1試合3トライは日本初。代表戦で自身初めてのハットトリックに「ボーナスポイントはチームで狙っていこうと話していた。すごくうれしい」と充実感をにじませた。エースの活躍にジョセフ・ヘッドコーチも「外からフェラーリが突進していくようだった。ポテンシャルを示してくれた」と表情を緩ませた。

15年W杯に22歳の若さで出場し、巧みなステップと、切れのあるランで世界を驚かせた。南アフリカを破った試合では後半にサインプレーから抜け出し、五郎丸の同点に追いつくトライを演出。1次リーグ全4試合に出場し、日本の躍進を支えた。そこから4年。前回大会は「先輩についていけばいい」と思っていたが、現在はリーダーの1人として、プレーで結果を出すことにこだわってきた。

桐蔭学園高卒業後、大学には進まず、単身南アフリカに渡り武者修行。自身より才能のある選手が努力を怠り、伸び悩む姿を反面教師にし、「自分はこの道で生きていく」とプロとしての覚悟を決めた。幼少期は、学芸会などで口数の少ない役割を選ぶシャイな性格だったが、ラグビーだけは「目立ちたい」と特別だ。

今回のW杯後には欧州への海外挑戦も見据える。次戦は世界ランキング1位のアイルランド。「スペースがあればトライを狙っていく」と松島。日本が世界に誇る才能が、自国開催に沸くW杯を席巻する。【奥山将志】

◆松島幸太朗(まつしま・こうたろう)1993年(平5)2月26日生まれ、南アフリカ・プレトリア出身。神奈川・桐蔭学園高からSRシャークス(南アフリカ)の下部組織に進み、14年にサントリーに入団。15年W杯イングランド大会では、WTBとして4試合全てに出場。日本代表キャップ数は35。178センチ、88キロ。愛称はマツ。

◆W杯で1試合複数トライを挙げた日本代表選手 松島が3トライを挙げ、日本代表の最多記録を更新した。これまで2トライは8人(のべ9回)おり、第1回大会(87年)では朽木とタウモエフォラウ、第2回大会(91年)は朽木、吉田、増保、第3回大会(95年)はオト、梶原、第6回大会(99年)はトンプソン、第7回大会(11年)はアレジが記録している。