高校ラグビーで4度の全国制覇を達成した京都の名門・伏見工(現京都工学院)の山口良治総監督(76)が28日、4年前の南アフリカ戦に続き日本の大金星を目撃した。

アイルランド戦を静岡の会場で観戦し「奇跡が2度も起きた。ジョセフHCは猛練習で、選手に勝つ心を植え付けた。かつての伏工もそうやった。本当に『信は力なり』や。涙が止まらない」と泣いた。

16年に他界した平尾誠二さん(享年53)らを擁し、80年度に初の全国制覇を達成した軌跡は、ドラマ「スクール☆ウォーズ」として描かれた。校内暴力で荒れた高校を日本一に導いたのは、汗と血のにじむ猛練習と「勝てるというおまじないをかけること」だったという。同校出身のSH田中も途中出場で勝利に貢献。山口総監督は「日本はタックルが素晴らしかった。それが相手の焦りを誘った。球さばきのいいチビ(田中)が入ったことで、リズムが良くなった」と分析。自身も日本代表時代の71年9月28日のイングランド戦で、伝説に残る3-6の激闘を演じた。それを上回る試合に「目に見えない力が奇跡を呼ぶ」と興奮した。

15年の南アフリカ戦は、平尾さんと観戦する約束をしていた。だが平尾さんは闘病中で一緒に見ることはできず。「今日の試合を平尾は空の上から見とった。誰よりも、この勝利を待っていたからね。日本のために彼が歩んできたことは、まだ続いている。この結果も平尾の歴史のひとつです」。歓喜の余韻が残る会場からタクシーに乗り、亡き教え子を思い、いつまでも泣いていた。【益子浩一】